「はじめに」
大抵の場合において、絵を描くという行為に決まった法則は存在しない。それはPPGの場合においても同じ事だ。
しかし、中にはより劇中の絵柄によく似せて描きたいという人も必ず存在する。
このコーナーでは、より劇中の絵柄に近付けるための小技を、私が仕事の関係上使っている道具とも合わせて紹介する。当然、フリーハンドによる描き手の個性に頼ったイラストも大いに奨励
されて然るべきではある。
しかし、より本物に近い絵柄を望むにあたり、これらの技術を一応、念頭に置いておいて損はないのではないか、と私は信じる。
「輪郭について」
PPGのイラストレーションにおいて、最も描く事が困難と思われる部分が、
頭(顔)の輪郭である。
カートゥーンネットワーク(以下CNと略す)のキャラクターシートによると、PPG3人の頭の
輪郭にあたる楕円は、その目安として
約55度の楕円が理想的とされている。しかし、劇中での輪郭の楕円は55度より太かったり細かったりしていて、絶対的な設定としての楕円は実の所、曖昧で
あると言えよう。
さて、実際の楕円を見てみよう。
PPGの劇中において、最も理想的な楕円である55度であるが、実際の所、目や口や髪を描く段階においてはおかしい所がある。
並べて見てみれば分かり易いが、理想的な輪郭線と55度の楕円を
比べると、
55度の楕円の方が両脇のカーブが尖っているのだ。理想的な輪郭線の方は、55度の楕円の
両脇のカーブを少し緩やかに修正してあるのだ。
パソコンのペイントソフト、
あるいはドローソフトにおいてはあらかじめ素材を作っておけば後でいくらでも修正、加筆が可能であるが、実際に鉛筆やペンで紙の上において、理想的な楕円を用いてPPGを描くというのは少し
厄介である。フリーハンドなら線は必ずゆがむであろうし、いちいち素材をコピーし切り貼りするのも面倒だ。
そこで、多少なりとも劇中の画面に近づけたいと考えているのなら。
60度の楕円を試してみよう。
見た目は非常に微妙な所で使えるか否か迷うかもしれないが、55度の楕円より脇のカーブが
尖っておらず理想的なカーブに近い。しかも楕円の角度も55度よりはより一般的によく知られており、使い易い。
懐に若干の余裕があるのなら、60度の楕円の
テンプレートを何種類か購入される
事を奨励する。最低でも2種類のテンプレートが必要だろう
(1枚は60度のみのもので直径30mm以上のもの、もう1枚は28mm以下で25〜60度の4種類のもの)。1枚につき1200〜2300円位の価格である。
55度のものだと専門の画材屋に行かなければならないが、60度なら大抵、近所の
文房具屋で購入が可能だ。
ちなみに、PPGのDCコミックで毎回表紙を描いている
PHIL MOY氏も、55度の
テンプレートを用いていると思われる。
補足: ドローソフトがあるのなら、大体の値で楕円を描く事が簡単だ。横60mm×縦52mmの値を入力すれば、たちまち約60度の楕円が出来上がる。後はそれを任意で加工すればいいだけだ。
「各個所のバランスについて」
PPGの描き方に関しては、CNの
キャラクターシートでもある程度の決まり事があり、作画のあたってもシートの指示によって細かい部分が描かれている(腕、足、胴体、顔のアングル、等)が、
我々のような
アマチュアの絵描きにおいては、劇中の画面(TV、ビデオ、DVD等)や関連の書籍、コミック等が
手本となる。もっと上の次元を目指すのであれば、手本となる画像をよく
観察
し、練習し、ひたすら描く
努力が大事である。努力を怠っていて、良い絵は描けないのだ。
「ケイ描きのテクニックについて」
紙の上に均一の線で絵を描く行為、いわゆる
テクニカルイラストは、大抵は
取扱説明書に添付されたイラストによく見られるもので、最もよく知られる例としては玩具、AV機器、家電製品などの
説明に使われるが、その描き方は
ある種の定規を多く使って描かれる。立体物を
正確かつ的確に描く、この複雑な作業の技術は、実はPPGを描く際に効果的な応用が可能なのである。
作業の工程は以下の通り。
使われるペンは
ピグマ等の水性ペン(極細から極太まで数種類)でかまわない。
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下書きの線に合わせて、楕円のテンプレートあるいは雲形定規のカーブを置き、後は下書きの線にあわせてペンをなぞるだけである(画像では紙上でバブルスを描く際に真円のテンプレートを使用
している)。 |
この作業を根気よく繰り返し、絵を描いていく(画像では紙上でバターカップを描く際に雲形定規を使用している)。時には細かい所をフリーハンドで調整する。 |
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はみ出し等の修正もアナログ、デジタル共同じ要領でホワイト、消しゴムツールで行う。慣れれば、それほど時間をかけずにPPGを描く事が出来る。元の絵柄がシンプルなので、練習には
うってつけの素材である。 |
今の所、単体でPPGを描くにあたりドローソフトが適していると思われるが、より多くの人物を登場させている画面を描く場合は、あらかじめ紙の上に清書したモノクロ原稿をスキャナーで取り込み、それを
ペイントソフトで着色していく方法が有効と思われる。
蛇足ではあるが、36房の画像の多くがこれらの方法に基いて作られている。興味のある方は念頭に置いていただけると幸いである。
Lumper Sheider