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話は少し遡る。
「彼」達が全世界に向けて世界征服宣言を行った頃、タウンズビルから遠く離れた町の一角に、バルドはいた。
感情に任せて病院を飛び出し、そこからどうやってこの街にやって来たのか、本人もよく分かっていなかった。それより先に、見知らぬ土地にたった一人で取り残された、巨大な孤独感と 恐怖が、彼女の心を支配していた。
生まれてから大して家の外に出る事すら満足に許されず、今までの時間の大半をユートニウム博士の自宅で過ごした彼女にとって、外の世界はあこがれであると同時に、言い知れぬ闇の世界でもあった。
大好きな姉達がいた時はそれこそ、外の世界やタウンズビルの様子を あれやこれやと姉達から聞いて、心ときめかせた事だろう。しかし完全に知らない街に踏み込んでいた今の彼女にとって、目に見える全ての人や物が、恐怖の対象だった。
いつの間にかお気に入りのワンピースは薄汚れ、髪は乱れ、泣き崩れた顔もやはり埃にまみれ、空腹で立っているのもやっとの状態だった。 その様なバルドの姿に、時折親切な大人が数人、彼女に声をかける。だが恐怖の余り、彼女はその場を一方的に逃げ出し、さらによく分からない街角に迷い込んでいった。
日は暮れ、太陽は空を赤く染め、いよいよ夕闇が辺りを包み始めていた。
薄暗い町外れの空き地の資材置き場に、バルドが必死の形相で 駆け込んでくる。そのすぐ後ろを、いかにも獰猛そうな形相の野良犬が追いかけてくる。
よく見るとバルドの衣服のスカートの一部が破れ、その切れ端を野良犬がくわえていた。
とうとう空き地の一角に追い詰められ、へたりこんだバルドのすぐ傍に、野良犬が迫る。バルド: 「…あっちへ行って!!ほっといて!!!!…行ってったらぁ!!!!!」
疲労と恐怖で錯乱したバルドが、手元の石を掴み、野良犬に向かって投げつける。
当たっているか否かも確かめず、バルドは手当たり次第、手元の石を次々と投げつけた。その石の幾つかが犬の頭に 連続して当たり、がらにもなく情けない泣き声を上げて、野良犬はそそくさと逃げ去っていった。
野良犬が去って静かになった空き地全体に、バルドのすすり泣きの声が流れる。バルド:「…お姉ちゃん…」
やがて日は西の彼方に消え、闇が静かに忍び寄ってくる。
「彼」の世界征服宣言が全世界を席巻いてから、すでに一週間近くになろうとしていたが、マサトシの住むガルフブリーズの街では、まだそれ程の緊張感は感じられなかった。
その日の新聞の朝刊の一角に、この見出しが踊っていた。
『新生PPG登場か?』
その 記事に記載されているPPGとは、その前の日にマサトシの手により誕生した、コピーPPGの事だった。ただし、記事き書かれている事はあくまで未知の存在としてであり、その秘密を知る者はマサトシと記者のアダム・ノイマン、及びその家族だけだった。尤も、地元の新聞の記事にろくに注目する人間はごく稀であり、 しばらくの間彼等の事は注目される事はなかった。その間も、彼女達の為に新しいベッドを購入したり、部屋を整えたりと、ノイマン家は忙しかった。その中心にいたのは、やはりマサトシだった。
マサトシの使っている部屋を模様替えして、PPG三人と共用にする為に家具を移動させるマサトシとPPG達。
さすがにPPGだけあって、彼の的確な指示と手助けだけで、模様替えは瞬く間に終了した。
机の上でくつろぐマサトシに、おもむろにブライトが尋ねた。ブライト:「あのねマサトシ…あたし達、PPGなのにどうして、PPGじゃないの?だったら私達の本当の名前って…」
マサトシ:「うん…それはね…」
傍らにあったPPGグッズの一つを取り出し、彼は説明を始める。
マサトシ:「…君達が誕生する時、ちゃんとしたモデルがあったんだ。」
手のひらサイズのバブルスのぬいぐるみを片手に、彼は言葉を続けた。
自分達の姿に 良く似たぬいぐるみを、興味深く見つめる三人。ブルー:「…あたし達の、姉妹みたいなものなの?」
その質問に深く頷くマサトシ。
マサトシ:「そして…本当のPPG達は今、悪党三人によって、捕らえられているんだ。」
ブレード: 「あたし達の前にPPGがいたなんて、初耳だよ…じゃああたし達は、何て言う名前なの?」
その問いに、別の方角から答えが返ってきた。
何時の間に部屋の前にいたのか、答えを返したのはアダムだった。アダム:「それだったら、マサトシの生まれた国…ジャパンのJの字を取って、 JPPGって区別してみてはどうだい?」
三人:「JPPG???」
アダム:「…そうだな、Jの略は…ジャスティン…パワーパフガールズって、どうかな?」
肝心の3人はどうしたら いいか、思案がまとまらない様子だ。一方のマサトシは、アダムのこの提案をとても気に入り、三人に勧めた。
マサトシ:「ジャスティン…パワーパフガールズ、かあ…僕はこの名前が良いと思うけど…君達はどうだい?」
しばらく三人は顔を合わせて黙り込んだ後、次の歓声を上げた。
三人:「…私達、JPPG…ジャスティン・パワーパフガールズ!!!悪者達をやっつけて、本物のPPGを必ず助け出してみせるわ!!!!」
自分達の名前がようやく決定し、意気上がる三人。その輪に マサトシも加わって、模様替えしたての部屋に歓声の声が響く。
マサトシ:「…あ!おじさん…何か用があったんですか?」
アダムが部屋の前にいた事を思い出して、マサトシが尋ねる。
アダム:「…ああ、JPPGの事でなんだが、彼女達の養育費が タウンズビルの方で個人的に出資される事が決まったんでな…こっちとしては大助かりだが。」
マサトシ:「…じゃあ、専門の施設とかに別々で暮らす必要がなくなったんですね?」
アダム:「ああ…折角の模様替えも 無駄にはならないみたいだな…ただ…」
マサトシ:「ただ…何ですか…?」
アダム:「…タウンズビルの保安の確保の為に、出来るだけ平日はタウンズビルに留まってほしいとの、市長の要望 だ。」
この要請を聞いて、三人とも異議を唱えた。
ブルー:「じゃあ、マサトシとあたし達、結局は離れて暮らすの?そんなのやだぁ!」
ブライト:「あたしも反対! 」
ブレード:「あたしも!」
異口同音に異議を訴えるJPPGに、さらにアダムが説明を続ける。
アダム:「…そこでだ、マサトシ…タウンズビルで暮らす気はないかね?」
この突然の突飛な提案に、 マサトシもさらなる説明を求めた。
アダム:「そうだな…平日は君もJPPGも、タウンズビルの学校や幼稚園に通って、週末くらいはこっちで暮らすんだ。こっちに帰ってくる時はJPPGにかついでもらって来れはいいんじゃないかな?」
マサトシ: 「ちょ、ちょっと待って下さい…タウンズビルの、どこに住むんですか?」
アダム:「確か市長の秘書の、べラム女史の住宅がいいらしいぞ。べラム女史本人にも了解はもらっているし、明日から始めたってOKだ。」
自分の 予想を越える事態の進み具合に、マサトシも唖然とする他はなかった。
一方、JPPGの三人は大喜びだ。ブレード:「やっぱりマサトシと一緒に暮らすんだ!やったぁ!!!」
ブルー:「だったら、 早速ミス・べラムの家に行こう!」
ブライト:「ちょっと待って!ちゃんとミス・べラムに電話して、マサトシの引越しの準備を手伝って、それから…」
マサトシ:「…もう 勘弁してよ〜!!!」
次の日、マサトシはそれまで通っていた学校のクラスメイトへの連絡や先生への断り事に一日中追われ、JPPGにかつがれてタウンズビルへ飛び立った時には、もう夕方に差しかかろうとしていた。
フロリダからタウンズビルを目指して上空3千メートル前後の高度を飛行する、赤と青と白のストライプ。
タウンズビルのミス・べラム宅を目指して空を飛んで向かうJPPGとマサトシの4人だ。
マサトシは防寒対策の為に厚着し、目にはスキー用のゴーグルを装着しての飛行だった。本来のJPPGの飛行能力 だったら、ものの10分足らずくらいでタウンズビルまでの片道をひとッ飛び出来るはずなのだが、生身の人間のマサトシの身体を心配して、あえて亜音速の飛行を余儀なくされていた。
しかしそんな空の旅の中でも、彼女達にとってはまるで初めての飛行機による旅行みたいな気分そのものだった。
リーダー格の ブライトの背にマサトシを乗せて、その前をブルーとブレードが飛んで、いわゆるスリップストリームを形成させて、生身のマサトシを守っていたので、飛行中にもかかわらず彼はJPPG達と会話する事が出来た。
マサトシの腕には衛星通信用のナビゲーターが握られており、いつでも飛行ルートの修正指示を出来るように 耳の傍にあてがわれていた。いくつかのたわいのない会話を交わし、タウンズビルまであと数十キロという距離まで飛んだ所で、突然、ブルーが皆に止まる様指示した。
ブルー:「みんな止まって!」
少しずつスピードを落とし、マサトシも懸命にバランスをとる。皆が空中で停止した にも関わらず、なおブルーは何かに聞き耳を立てている様子だ。
不思議に思ったブライトが尋ねる。ブライト:「どうしたのブルー?こんな空の真中で?もうすぐタウンズビルに到着するのに…」
ブルー:「…しっ!…静かにッ…」
普段は明るい表情のブルーが、真剣な 顔つきでブライトを制した。彼女には何か周りには聞こえない、遠い物音みたいなものが聞こえる様子だ。
マサトシもブルーの集中力を削がないように、小声で尋ねる。マサトシ:「…何か聞こえるの…?」
やがて何かを聞きつけたらしいブルーの表情が、一段と険しくなる。
ブルー:「…聞こえるわ…声にならない、心の声が…誰か、助けを呼んでる!!」
ブレード:「声って…ここは上空3千メートルだぜ。鳥の鳴き声の間違いじゃ…?」
ブルー:「…ううん… 間違い無い!…この近く…この下の街だわ!」
ブライト:「…でもこのまま寄り道したら、到着が夜になっちゃうし…」
いささかブライトは救助に向かうのに気が向かないらしい。しかしブルーは頑として助けに向かう様、皆に懇願する。
ブルー:「 マサトシ御願い!!本当に助けを呼んでるの…!!」
彼女の真剣な訴えに、彼も意を決した。
マサトシ:「…助けに行こう!ブルー、行き先が分かる?」
力強く頷いたブルーが、皆の真っ先に回って誘導 する。
ブレードもブライトも、ジェットコースターよりなお鋭い急降下で、後に続く。やがて、彼等はどこか知らない街の、空き地の一つにたどり着いていた。
マサトシのナビゲータには、当然ながら自分達がどこにいるかは把握していたが、空き地から眺める空は、すでに西の大地に沈み込もうとしていた。ブレード:「…誰もいないじゃないか…人間ならいざ知らず、小さい動物や昆虫だったら、怒るよ本当!」
真っ赤な夕日を目の当たりにし、ブレードが腹を立てて言った。その時、土管置き場でうろうろしていたブライトが、何かを見つけた様だった。
ブライト:「ブレード、ブルー、マサトシ!…もしかして…助けを呼んでいたのって…」
ブライトが指したある土管の空洞の中。
そこには、哀れな程にやせ細り、横向きでうずくまって倒れている女の子がいた。
服は雑巾のように汚れ、髪は乱れ、生まれたての胎児のように震える身体は、 もう何日も食べ物を口にしていない事が容易に推測出来た。
乾いた大地のような唇からは、何かうわ言のようなか細い声が聞こえるが、漏れる声は言葉なっていない。
薄く開いた目は一見、死んでる様に見えるも、まだ命の輝きを辛うじて失っていなかった。
そんな棒っ切れのような瀕死の少女の姿を一目見て、 マサトシの脳裏にある記憶の断片が過る。
それは、以前にミス・べラムから預かった、あのモンタージュ写真の少女の姿だった。もちろん、現実の目の前にいるこの少女とは似ても似つかない姿だが、落ち窪んだ眼孔の奥にある眼の輝きを見て、彼は即座に理解した。この子が、行方不明のバルドなのだ、と。
マサトシ:「ブライト!急いで救急車を呼んで来て!」
土管の奥からそっとバルドを運び出し、重ね着していた服を脱いで彼女に着せるマサトシ。
マサトシ:「…君、バルド、だよね?」
彼の腕の中でこの言葉を聞いたバルドが、 細くなった声を振り絞って言った。
バルド:「…ほっとい…て…」
恐らくは心のどこかで助けを求めていたであろうものの、表面は自ら孤独の中で死を待っていた彼女の目に、ある影がぼんやりと映る。それは、バルドの様子を固唾を飲んで見守っていたブルーとブレードの姿だった。
彼女達の 姿を前にして、バルドの態度に変化が起きた。バルド:「…お…ねぇ…ちゃん…?」
しかしブルーとブレードはそれ所ではなかった。息の細くなりかけたこの哀れな女の子を助けようと、必死に励ましていたのだ。
ブレード:「もうすぐ救急車が駆けつけて くる!あんたは助かるんだ!だから…死ぬな!」
ブルー:「…あたし達が一緒だから…だから、一人で死んじゃ駄目だよぉ!」
この言葉が胸の奥に届いたのか、すでに枯れたと思われたバルドの瞳に、涙が溢れた。
バルド:「…おねえ…ちゃん!」
生気を失いかけたバルドの手を、ブルーとブレードがしっかりと握る。それに伴い、失いかけた彼女の心の灯が、目に見えて強く輝き始めた様に見えた。
1、2分後、救急車ごと救急隊員を運んできたブライトが、車を バルド達の傍らに置く。
程なく事態を飲みこんだ隊員たちが、バルドに応急処置を施し、車の中に運んだ。
瀕死のバルドを見送ろうとするJPPGに、マサトシが一緒に車に乗って行く様に言った。マサトシ:「今夜はあの子にずっと付いてあげなよ。…これでいいのか分からないけど、今の あの子には、君達が一緒にいてあげた方がいいと思うんだ…」
三人:「うん…」
20分後。
バルドが運ばれた病院のロビーで、マサトシはミス・べラムの自宅に電話をかけていた。今夜は病院で一晩、バルドの様子を見守る事に決めた事を、彼女に伝える為にである。翌朝、ロビーの ソファーで何時の間にか寝入っていたマサトシの肩を、誰かが叩いた。
眠い眼をこすって顔を上げると、彼の前にはミス・べラムが立っていた。ミス・べラム:「おはよう、マサトシ君。」
マサトシ:「…ミス・べラム!…いつからここに?」
唐突に目の前に立っていた 彼女の姿に、驚きの余り眠気も飛んだマサトシが言った。
ミス・べラム:「…ついさっきね…今確か、午前6時だから、夕べ君から連絡を受けて、市長から許可を得てここに来たのよ。」
マサトシ:「そうですか…」
ミス・べラム:「…でも驚いたわ。コピーPPGを 貴方が創ったって話だけでも凄いのに、まさか…バルドまで見つけてくれたなんて、大活躍ね?」
マサトシ:「僕の活躍じゃありませんよ…あの子を見つけたのはブルーの御陰だし、PPGを創る事が出来たのも…」
ミス・べラム:「ジーン博士の協力の賜物、でしょ?」
マサトシ:「…知ってたんですか…?」
ミス・べラム:「…何となく予想はしてたわ。」
謙遜して淡々と話すマサトシと、感心気味に話す秘書べラム。
おもむろに、彼女が包みを差し出す。包みの中は、サンドイッチだった。ミス・べラム:「昨日は夕飯も 食べていないんじゃないの?あの子達もきっとお腹空かしてるでしょうから、食べなさい?」
そう言われて、マサトシもようやく自分の空腹感に気付いた。すっかりバルドの容態が気がかりで、食事も忘れていたのだ。
マサトシ:「…そうだ!折角だから皆で食べましょう。JPPGも紹介したいし…」
マサトシがバルドの病室の前に案内する。そこの前の長椅子に、小さな女の子三人が、身を寄せ合って眠っていた。
ミス・べラム:「この子達が?」
細かい色や髪形の違いはあるものの、シルエットはそっくりなコピーPPGを見て、秘書べラムも感心する他はなかった。幼い仕草までが、彼女の知る PPGとそっくりだったからである。
三人をロビーに運び、そっと起こす。
三人:「…あ…おはようマサトシ…?」
彼女達の前に、見なれない女性とマサトシがいた。それを見取って、マサトシが秘書べラムを紹介する。
ブライト:「…あ!あの子は…大丈夫なのかなあ?」
ミス・べラム:「心配しないで。しばらくは安静させた方がいいけど、命に別状はないって、お医者さんも言ってたから…貴女達だって、お腹空いてない?」
ブルー:「…あの子は、何日も何も食べてないから…先にあの子に食べさせなきゃ…」
マサトシ:「今は 駄目だよ。もう少しあの子が良くなってからじゃないと、逆に身体をこわしちゃうから。」
ブレード:「…でもォ…」
ミス・べラム:「貴女達はちゃんと、あの子を助けたわ。ここからはお医者さんにまかせた方がいいわ。」
心底、バルドの容態を気にかけるがJPPGだったが、 秘書べラムに諭されて、ようやく了解した。
それから三日があっという間に過ぎた。
タウンズビルの秘書べラムの住宅に引っ越したマサトシとJPPGだが、市長との挨拶、学校や幼稚園との手続きに忙しかった。その間もタウンズビルの事件や事故の解決に奔走するJPPGは、あっという間に人々の注目を集めた。 PPGの失踪以降、不安をかかえていたタウンズビルの住人達は、この突然のヒーローの到来を喜び、PPGとタウンズビルの救世主と称えた。
マサトシはあえて表に出ず、表向きは住人の一人として彼女達と付き合う形を取った。彼女達の秘密が漏れるのを恐れた事と同時に、余り人に取り巻かれる事が嫌だったからである。
4日目。
意識を回復したバルドを見舞う為、JPPGとマサトシ、秘書べラムはあの病院にいた。
腕に点滴を付け、徐々に食事も始めた彼女の顔色は今だ優れなかったが、髪や格好を整え、顔つきも元にもどりつつあった。
表情は以前にも増して愛らしさを湛え、再会したマサトシもJPPGもその輝くばかりの笑顔に、改めて驚かされた。マサトシ:「…よかったぁ…もう大丈夫だよね?」
三人:「こんにちはバルドぉ!!!」
いくらかは元気を取り戻したバルドだったが、余り顔を知らない彼等の姿を見て、まだちょっと何かを躊躇している様子 だった。それを悟って、マサトシ達が自己紹介を始める。
マサトシ:「…ああ、自己紹介がまだだったね…僕の名前は磯城乃正寿…少し前にタウンズビルに引っ越してきたんだ。この子達はJPPG…」
ブライト:「あたしはブライト!」
ブルー:「あたし、ブルー!!」
ブレード:「…あたしは、ブレード。」
いつもより元気なブライトとブルーの二人に対し、ブレードは何か縮こまっている様子だ。
ブルー:「…もうブレード、貴女が 一番バルドの事心配してたクセに、どうして恥かしがっているの?」
ブライト:「…ほらぁ、前に出て挨拶!」
無理やりバルドの前に引き出されたブレードは、恥かしさの余り下を向いたまま固まっていた。
バルド: 「…あの、おねえちゃん達、PPG…じゃない、よね?」
ブライト:「…ちょっとあたし達も残念だけど、あたし達、」
三人:「ジャスティン・パワーパフガールズ!」
不思議そうにJPPGを見つめるバルドに、秘書べラムが説明する。
ミス・べラム:「この娘達はね、実はここにいるマサトシが創ったの。本物のPPGを助ける為にね。」
バルド:「…おねえちゃん達を?」
因みにバルドの見舞いに行く前に、マサトシは秘書べラムからバルドの素性を聞かされていたので、あえてこの 場ではバルドの様子を見守っていた。
マサトシ:「…実はね、今、タウンズビルの三人の悪党に本物のPPGは捕まっていて、悪党達はPPGからクローン技術で悪のPPGを作ったんだ。ここにいるJPPGは、悪のPPGと戦う為に誕生したんだ。君を助けたのも、この子達さ。」
三日前の 出来事をおぼろげながら思い出し、ようやくバルドは警戒を解いて、心を許した様子で、マサトシとJPPGに感謝した。
バルド:「…そうだったの…ありがとう」
まだ胸の内で何かを思いわずらっている彼女の様子を見て、秘書べラムがこの言葉を語った。
ミス・べラム: 「…ねえバルド、貴女がよかったら、私の家に来ない?この子達もマサトシも一緒だし…少なくとも、さみしい思いはしないはずよ?」
ブレード:「本当?…だったらそうしようよバルド!」
ブルー:「あたし、にぎやかなの 大好きだから賛成!」
ブライト:「二人とも!まだバルドの返事聞いてないでしょ?…あ、あたしも賛成よ…だって、バルドはあたし達の姉妹、みたいなものだもの…ねえ?」
ブルー&ブレード:「姉妹みたいな、じゃなくて姉妹なの!」
熱烈に同居を薦めるJPPG達を見て、バルドはすがるような眼差しでマサトシに言った。
バルド:「…でも、本当に…いいの?」
マサトシ:「バルドの事は秘書べラムから聞いたよ。 …ユートニウム博士はまだ病院で治療中だし、打撲が直った所で今度は心の病を直さなきゃならない。博士には可哀想だけど、バルドを一人には出来ない。それに…」
バルド:「それに?」
うっかり続きの言葉を話そうとして、マサトシは言葉を飲みこんだ。世界中のコピーPPGの事をあやうく話して しまう所だった。しかし、バルドはなお哀願の眼差しで、彼の言葉の続きの言葉を待った。
考えあぐねいた末、マサトシはこの言葉を話していた。マサトシ:「…それに、バルドが来てくれると、僕も嬉しい…僕、一人ッ子だったし。」
ややはにかみながら、マサトシはこの言葉を語っていた。 それは、彼の正直な気持ちだった。それでもさすがに、彼女の事を「妹みたい」と呼ぶのは恥かしくて口に出来なかった。
それでもその言葉を聞いて、嬉し涙に潤んだ目元を拭いながら、バルドも笑顔で頷いた。バルド:「…うん!」
JPPG:「 YEAR!!!!!!!!」
一斉にJPPG達の歓呼の声が上がった。
ミス・べラム:「…静かに!ここは病院よ…!」
咄嗟に秘書べラムに注意された三人だったが、それでも嬉しさをこらえきれず、くすくすと小声で笑った。つられてバルドも小声で笑った。
そんな様子を胸を撫で下ろした感じで、秘書べラムとマサトシが目を細めながら見守っていた。
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