第1話 「事件の始まり」 キャプチャー3

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少女:「…あのう…ここ、何処?」

 生まれたばかりにしてはちゃんと服を着、言葉を知っているその少女は、唖然として自分を見つめる4人を眺めて、呟いた。
 その声は、 繊細な楽器の奏でる音にも似て、可憐だった。

バターカップ:「…おまえこそ、誰?」

ブロッサム:「バターカップ!この娘は…」

少女:お姉ちゃん!

バブルス:「…お姉ちゃん?

 彼女が叫んだその先に、PPG三人が居た。

PPG:「アタシ達が、お姉ちゃん?

 その少女の言葉で、ブロッサムは考えた。

 〜やはり、博士は私達3人を生んだ時と同じ方法で、この娘を作ったのだ。〜

 ただし、彼女がPPGと大きく異なる点は、その完成されたと思われる端麗な容姿だろう。
 PPG3人の特徴を部分的に兼ね備えたその姿は、ユートニウム博士が理想として考えていた姿そのものと考えても いいだろう。
 たよりない足取りで少女はPPGの元に近寄る。PPGの様に空中に浮かびながら移動する様子はなく、本当に歩いている。
 並んで分った事だが、彼女の身長は明らかにPPG3人よりも高く、 生理年齢もPPGよりも高いようだ。しかし、PPG三人を見つめる彼女の大きな瞳は、明らかに親や年上の姉妹に対する憧れと親愛の情に満ちている様だった。
 最初に彼女の手を握り、親愛の情をいっぱいに 振舞ったのはバブルスだった。
 無防備と言うか、無邪気とも取れるバブルスのこの素直な反応に、少女も喜びの表情も満面に、彼女の小さな身体をかき抱いて、身体の感触を確かめる様に甘えた。
 傍目から観ればバブルスが年下なのだろうが、本当ならお姉さんと呼ばれるはずのその少女が、バブルスに甘えているのだ。

バブルス:「…あの、ええと…」

 普段なら自分が 甘えているはずのバブルスだったが、自分が「お姉ちゃん」と呼ばれた事がよほど新鮮な体験だったのか、すっかりこの少女を気に入っていた。その様子を見て、ブロッサムもようやく計算高い警戒を解き、バブルスの元に 近寄る。

ブロッサム:はじめまして!

 ブロッサムが勤めて明るい声で、ハッキリと少女に挨拶した。

ブロッサム:「あたしの名前はブロッサム。 この子はバブルスで、あそこにいるのが…」

 と、バターカップの方角を差した時、彼女は何時の間にかバブルスの傍らに立ち、少女を睨みつけていた。
 彼女の素性が怪しいとかという警戒より、余りにも可愛らしい 格好と容姿が自分の好みに合わないのだ。

バターカップ:バターカップ!

 明らかに不機嫌な口調で、自己紹介をするバターカップ。
 それでも少女は 特に怖がる様子もなく、興味深げにバターカップを見つめる。
 傍目には少女を拒否し続けようとしていたバターカップだったが、彼女の瞳を見ているうちに、どうしても彼女を受け入れてもいいという感情に陥ってしまう。 それ程、この少女の瞳から放たれる光には、邪気が感じられないのだ。調度、生まれて間も無い動物の子供の瞳を連想させるものと考えて良いだろう。
 その瞳の輝きに耐えられなくなったバターカップがついに折れた。

バターカップ:「…もう、しょうがないなァ…!」

 あからさまに彼女を好きにはなれないバターカップだったが、あからさまに忌み嫌う気にもなれなかっとのも事実だった。

バターカップ:「…で、あんたの名前は?」

 すかさずバターカップが問いを発する。

少女:「…あ…あのう…あたし…」

 咄嗟に言葉を掛けられて、少女は戸惑った。

ブロッサム:「この子、まだ誕生したばかりだから、きっと名前がないのよ。」

バターカップ「でもアタシ達、生まれた時からちゃんと名前は覚えていたわよ?」

バブルス:「じゃあ、お姉ちゃんのあたし達が名前をつけるの!」

ブロッサム:「それじゃ…えっとぉ…」

バブルス:『BB』とか?」

バターカップ:「何それ?」

バブルス:「ほら、昔の女優で、えぇと…」

バターカップ:「それってブリジット・バルドーでしょ?名前長いよ!」

ブロッサム:『ビューティー』とか?」

バターカップ: 「それウマ過ぎてヤダ!」

バブルス:「じゃあバターカップは何がいいの?」

バターカップ:「そりゃあ、強くて カッコいい名前で『バスター』とか?」

ブロッサム:「それは男の子の名前でしょ!」

 3人がもめている途中で、 バブルスが部屋の一角で強張っている博士を見つけて、彼に尋ねた。

バブルス:「じゃあ、博士は?」

 しかし博士は喜びの余り硬直したまま、言葉が出ない。そこに、肝心の少女が口を開いた。

少女:「…あたし、バルド…?」

 自分の名前を確認するや、彼女の大きな瞳の奥が、さらに輝きを増した。
 その言葉に三人もようやく口を閉じて、そして納得した。

PPG:「じゃあ、貴女の名前は、バルド!!

 生まれたての妹の名前が決定して、PPGが歓声を上げる。
 そして、バルドと名付けられた少女も、 満面の笑みを浮かべる。
 その光景に突然、それまで沈黙していた博士の絶叫が割って入る。

博士:バルドォォォォォォォォォ!!!

 絶叫と共にバルドを抱擁する博士。
 その表情は喜びの涙でくしゃくしゃに崩れ、普段の冷静さを失っているのは誰の目にも明らかだ。あたかも一度死んだ自分の子が蘇ったかの様に、唖然と見つめるPPG3人を取り残し、 博士はバルドに何度も口付けを浴びせかけ、彼女の身体を壊しかねない位力強く抱きしめた。

博士:「…ついに…ついに、実現したんだ…!長年の夢が… 私の生涯の夢が、この手に!」

バルド:「博士…!!」

 しかし肝心のバルドは余りに力強く抱きしめられているので、苦しくて 仕方がなかった。

バルド:「博士…苦しいよォ!

 その言葉で、やっと博士は我に返った。

博士:「…ああすまないバルド。嬉し過ぎてつい力が 入ってしまってなァ…」

 ようやく抱擁から開放され、一息付いたバルドの表情が、ようやく笑顔に戻る。その姿を見つめる博士の頭の中にもう、PPGの姿は入っていなかった。
 バブルスは博士に可愛がられるバルドが 羨ましかったし、バターカップは博士をバルドに独占されたと感じてさらに不機嫌になっていた。
 そしてブロッサムは、この突然の姉妹の誕生に少なからず不安を感じていた。

 今までの平穏な生活が、バルドの 出現によって崩されるのではないか、と。

 〜そしてブロッサムの不吉な予感は、後日的中する事となる


 それから数日が過ぎた。

 普通の家族ならにぎやかな楽しい毎日、というのが普通の光景だろう。しかし、ユートニウム博士の自宅は違っていた。
 バルドが誕生してからというもの、博士はバルドだけを偏愛し、生活の 中で事あるごとに彼女をヒイキし始めていたのだ。
 普段の生活の中で交わされる会話も、PPG三人の話を博士が構う事は殆どなくなり、一方的にバルドと聞いたり話したりする事が圧倒的に多くなった。衣服もバルドにあてがわれる 洋服が高価で派手なものになり、PPGの私服は目に見えて安価で粗末なものになっていた。食事の時もバルドの分だけやたら豪勢で量も多く、明らかにPPG三人より差別されていた。就寝の時もバルドは、姉達と同じベッドで一緒に 寝たいと強く博士に頼んだのだが、博士は無理やり彼女を自分の隣に就かせ、PPGと一緒に寝かせようとしなかった。
 始めは笑って受け流していたPPGも、日数を重ねるにつれて博士に不満を漏らすようになり、ある日博士が一人で いる時を見計らって猛然と抗議した。生来人一倍純粋な性格のバルドも博士の仕打ちに改善を求め、自分一人を特別扱いしないで欲しいと懇願した。しかし、どういう訳か博士は頑として受け入れなかった。
 日数を重ねるにつれてバルドの 表情から、あの満面の笑顔が見られなくなり、一人で沈んでいる事が多くなった。ところがその姿が博士の過保護な性格を過剰に刺激し、より一層バルドに偏愛が集中する結果となっていた。
 さすがに生理年齢が違うせいもあって、 バルドは小学校に通い、姉達はいつもの幼稚園に通っていた。PPGが犯罪と戦っている時、バルドは大抵、博士の家にいるのが常だったが、バルドは家に居るのを避けたがっていた。何故なら、博士が彼女を必要以上に 可愛がるようになってから、姉達はバルドを避けるようになっていたのだ。
 バルドは博士の事は嫌いではなかったが、博士が自分しか可愛がらない事を残念に思っていたし、その事で自分が姉達に嫌われていると感じていたのだ。

〜自分は本当は姉達も博士も、みんな大好きなのに…

 差別されているPPG三人も決して、バルドの事は嫌いではなかった。
 とりわけ、バルドと最初に仲良しになったバブルスはバルドが良い子だという事も分っていたし、 生活のさまざまな場面でバルドが姉達と同じ扱いにしてくれるよう頼んでいた事を知っていた。それと同時に、彼女は博士の精神的な変貌をも、同時に直感的に感じ取っていた。

バブルス:「最近の博士…何か変… ブロッサムはどう思う?」

 ある日、犯罪との戦いを終えて家に帰る途中の帰り道、ふとバブルスが口を開いた。

ブロッサム:「うん、確かに…あの子が生まれてから何か、博士、私達に冷たくなったみたいだけど…」

バブルス:「ううん!バルドが生まれる前からだったよ!博士は…どうなっちゃったの…?」

ブロッサム:「生まれる前?ああ…そう言えば 実験装置を作ってた時も確かに、そうだったわね…」

バブルス:そうでしょ?

 沸きあがる疑問に悩まされていたバブルスの目に涙が溜まる。

バターカップ:「フン!どうせアタシ達はお払い箱なんだよ!あいつのおかげでね!」

ブロッサム:「バターカップ!そんな言い方はない でしょ!それにバルドがアタシ達の事心配してくれてる事知ってるでしょ?」

バターカップ:どうだか?

 バターカップは公然とバルドを非難した。いかにも彼女らしい反応だった。

バターカップ:「あいつはただ良い子ぶってるだけで、本当はアタシ達を追い出そうと博士を焚きつけているだけじゃん!」

 バターカップがこの言葉を発するや、ついにバブルスの感情が爆発した。

バブルス:「…あの子は…バルドはそんな悪い子じゃない!!!

ブロッサム&バターカップ:バブルス!!

 大粒の涙を撒き散らしながら、バブルスが別の方向へ飛び去っていった。
 残された二人は、ただ呆然として彼女の 飛び去った方角を眺めていた。

ブロッサム:「バターカップ!追いかけなきゃ…」

 咄嗟にバブルスを追いかけようとするブロッサム。しかし、バターカップは何故か動こうとしなかった。
 否、出来なかったのだ。

バターカップ:「…御免、ブロッサム…先に行ってて。」

 口ではバルドを非難したバターカップも、本当は彼女が悪くない事は分っていた。バターカップも彼女なりに博士の変貌ぶりに疑問を感じていたのだ。
 ブロッサムもそれ以上バターカップを問い詰めようとせず、穏やかな口調で話しかける。

ブロッサム:「…分ったわ。」

 勤めて優しい声で声を掛けた後、ブロッサムはバブルスの後を追っていった。

 誰もいなくなった夕焼け空の真中で、一人佇むバターカップの目に、涙が滲む。

バターカップ:…博士…


 その頃、人気のない町外れの、眺めのいい丘の上に、独り佇むバブルスがいた。
 一人ぼっちの彼女は彼女なりに、自分の中の疑問を整理整頓しようと、夕日に映えた空を眺めながら 考え込んでいた。
 泣きはらした目は心なしか少しひきつっている様にも見え、泣き疲れてようやく落ち着いたバブルスは、ただ今はひたすら、彼女を悩ます嫌な出来事が絵空事であって欲しいと願っていた。
 その少し後ろの茂みから、 遠慮がちにバブルスに声をかける人影があった。
 バルドだった。

バルド:「…あの…お姉ちゃん…」

バブルス:「…バルド?」

 妹の姿を確認して、バブルスが涙に濡れた顔を手で ぬぐい、作り笑いの笑顔で迎え入れる。

バブルス:「…よかった、調度お話したかったの。バルドと。」

バルド:「…あたし?」

 夕日を前に、並んで座るバブルスとバルド。

バルド:「お姉ちゃん、あのね…」

バブルス:「なァに?」

屈託のない明るい顔で言葉を返すバブルスに、バルドが重苦しい調子で、この言葉を吐いた。

バルド:「お姉ちゃん、 私…あの家を、出ていこうって、思ってるの…」

 考えてもいなかったバルドの意外な言葉に、バブルスは一瞬、言葉を失った。
さらに、バルドの言葉が続く。

バルド:「だって!…私があの家にいると、 お姉ちゃん達、博士に可愛がってもらえないし、それに…」

 言葉を続けようとするバルドの大きな瞳に、大粒の涙が溢れ出して頬を濡らした。

バブルス:「本当は、 みんなと仲良く楽しく暮らしたい、でしょ?」

 嗚咽で言葉の続きがなかなか出てこないバルドの代わりに、バブルスが続ける。その言葉に、はっとするバルド。

バブルス:「バルドが生まれた 時からわかってたもん。バルドはとってもいい子だって。いい子だから、本当はアタシ達よりもつらい思いしてるって…ブロッサムやバターカップだって、そう思ってると、思うよ。きっと。ただ、 博士が何だかおかしくなってて、…」

バルド:「博士が?」

バブルス:「博士が、貴女を創る時に実験装置っていうのを、作ったんだけど、その時から何だかおかしかった みたい…それまで、こんな事、全然なかったのに…どうしてなんだろ?」

 自分の誕生に関わる話の一切を聞いて、バルドの良心が一層の悲鳴をあげた。

バルド:「やっぱり、あたしは…」

 この家にいちゃいけないんだ、 そう言おうとしたその時、遠くから聞き覚えのある呼び声が聞こえてきた。
ブロッサムだった。

ブロッサム:「…もう、探したワよバブルス!」

 自分がここに来るまでのいきさつを思い出して、苦笑するバブルス。

バブルス:「あ…ごんなさい、ブロッサム」

ブロッサム:「…でもよかった。バルドも一緒で。」

 しかしバルドは、大好きな姉達の不幸が自分のせいだと改めて強く感じ、ブロッサムに目を合わせる事さえ 出来なかった。しかし、ブロッサムもバルドの隣に腰掛けて、勤めて優しい口調で話しかける。

ブロッサム:「…だって、博士が一緒だとどうしても話し辛かったし、あたしも…バルドと お話したかったの。」

 ブロッサムはバブルスとバルドがいる事も考慮して、この場にふさわしい言葉を語った。

ブロッサム:「博士ね、自分の研究に夢中になると周りが見えなくなる事がよくあったし、バルドの事もきっと …きっと研究が終われば、元のやさしい博士に戻ると思うの。あたしはね。…だから、バルド…」

 言葉が続かなくなったブロッサムの代わりに、バブルスが続きを紡ぐ。

バブルス:「…バルドは悪い子じゃないし、 ずっと私達と一緒に暮らしていいの。ね?」

 舌っ足らずな、それでいて力強い励ましに慰められて、バルドはバブルスの胸に顔を埋め、堰を切ったように激しく泣いた。
バブルスもつられて 大泣きしそうになったが、さすがに妹の手前で泣くわけにもいかず、懸命にこらえる。その光景を少し苦笑いしつつも優しい眼差しで見守っていたブロッサムが、突然別の方角に向かい、声をかける。

ブロッサム: 「もう!いい加減に出てきなさいバターカップ!

 その言葉で途端に、嗚咽が途切れる。そしてブロッサムの視線の先に視線が集中する。

 少し間を置いて、茂みの一角が蠢き、いかにもバツの悪そうな表情をしたバターカップが、半ば開き直りの態度で姿を現した。実はブロッサムがやってきてから間も経たない内に、彼女もバブルスとバルドの姿を見かけたのだが、ついさっきバルドを 非難した手前、素直に前に出るに出られずにいたのだった。その事を、ブロッサムも知っててあえて、バターカップを呼んだのだ。

バターカップ:「あ、あたしはねぇ…」

 普段は豪放磊落な態度のバターカップも、バルドを 目の前にして、口を開くのを躊躇した。

バルド:「お姉ちゃん…私…」

バターカップ:「…アタシは、べ別に、あんたの事…嫌いじゃないし、イヤな奴とか、 本当に思った、事…ないから、ね!」

 顔中を真っ赤に火照らせながら、懸命に言葉を紡ぐバターカップ。その光景に、ブロッサムもバブルスも思わず吹き出しそうになる。

バターカップ:笑うなったら!アタシは真剣にしゃべってんだよ!」

ブロッサム:「ゴメンゴメン…いいから続けて。」

 気を紛らわせて一息付いてから、 バターカップが言葉の続きを始める。

バターカップ:「だって…アタシ達の、妹、だもんね…」

 ようやく語り終わった時には、バターカップの顔はゆで蛸の様に真っ赤になっていた。
 しかし バルドはそんな彼女の姿を笑おうとせず、喜びの涙を浮かべて、こくんと頷いた。

バルド:…うん。

バターカップ:「…でもさァ、「お姉ちゃん」じゃ、誰の事呼んでるんだか、 わかんないよ?」

バブルス:「だったら、これから私達を呼ぶ時は、名前で呼んでもらおう。ね?」

ブロッサム:「…それがいいわ。私達は姉妹だから遠慮する事ないし、ねぇ バルド?」

 三人でバルドを囲んで座り、彼女の様子を覗う。そして、バルドがこの言葉を語った。

バルド:「…じゃあ、ブロッサム、バブルス、バターカップ、これでいい?お姉ちゃん?

 順番に一人一人の名前を確認して、バルドが姉達を覗う。

バターカップ:「だぁから、名前で…」

ブロッサム:「いいじゃない、三人一緒の時ぐらい「お姉ちゃん」って 呼んだって?」

バブルス:「あたしもその方がいい!だってバルドは間違ってないもん!」

 4人共言葉を失い、そして一斉に大声で笑った。

ブロッサム:「さあ、もうすぐ日が暮れるわ。晩ご飯の準備しなくちゃ。」

 ブロッサムがこの言葉を語った時、日は大分暮れて、太陽は半分、地平線の彼方に沈んでいた。

バルド:「あの…ブロッサム、…あたしも、御手伝い したい、の…駄目?」

ブロッサム:「…そんな事ないわ。大歓迎よ!」

バブルス:「…でもぉ、博士が何て言うか…」

バターカップ:駄目とは言わせないぜ!だってバルドの言ってる事が絶対正しいんだし…私、博士が何と言おうとバルドの言う事しか聞かない!

バブルス:「あは!そっかぁ…アタシ達がバルドを取り上げちゃえば?」

ブロッサム:「それいいかも!博士も少しは懲りるかもね!」

バルド:「…でも、乱暴は…」

ブロッサム:「心配しないで。博士だって私達の力は知ってるし。」

バブルス&バターカップ:さあ、一緒に帰ろう!

 二人が差し出した手につかまり、 バルドの身体が宙に浮かぶ。その両腕の下をブロッサムが抱え、4人が空高く舞い上がる。

バターカップ:「さあ、行くよ!

 パステル調の三色の虹の軌跡を描き、PPGが夕焼けの 大空を駆ける。
 三人の姉達に手助けされ、空を飛ぶバルドの顔に、失いかけた笑顔が浮かんでいた。もちろん彼女にとっては初めての体験だったが、大好きな姉達に囲まれて、この冒険を臆する事無く楽しんでいた。

 4人のいなくなった丘の上空に、不吉な影が浮かび上がり、虹の軌跡の跡を見つめる影があった。

影:「…まあ始めにしちゃ上出来って所かしら?さすがにあの娘にはヤケちゃうけど…この調子で、ユートニウム博士の ハートはバッチリ、ワシ掴みよ〜…さて、と。」

 その影は携帯電話を取り出すと、誰かに電話をかけ始めた。

影:「おサルさ〜ん…調子はど〜う?」

モジョジョジョ :「気安くサル呼ばわりするな!俺様の名はモジョジョジョだ!

影:「も〜少しは冗談に付き合ってよ。 調子は?」

モジョジョジョ:予想以上です!クローン生成プラントは組み立てを開始して、現在動力部分に取りかかっています。あのお嬢チャンの御陰で資金も資材も、雇われ技術者も使い放題で、 もうウハウハ状態ですよ。この調子ならあと1週間、いや5日で試験運転ができますぜ。」

影:ステキぃ〜!!後でバナナ死ぬほどおごっちゃうわ〜…こっちは任せて おいてね。じっくりと揺さぶりをかけて…あの子達をおびき出してあげるから。」

モジョジョジョ:「こっちも任せて下さい!」

影:「…じゃ、作戦の第2段階の開始ね…お嬢チャンにもよろしくネ。」

 電話のスイッチを切り、不気味な笑いと共に、その怪しい影は消滅した。


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