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再び、深夜。
PPGの住むユートニウム博士の住宅。
時刻は午前1時を回り、PPGはもちろん夢現の中を満喫している。一方の博士もすでに就寝していた。 そんな静寂の中に包まれた家の中に、「彼」がいた。
先のレニーの時と同様、「彼」の得意な超能力により、何人も気配と姿を感じ取る事は出来ない。
「彼」:「明日になったら…きっと、目を丸くするワよ〜あの子達。」
人知れず「彼」が呟いた。
もちろんこのチャンスにPPGに何かをしかければ、恐らくPPGは何らかの苦難に遭遇する事は間違い無いだろう。
しかし「彼」は彼女達に 目もくれず、まっすぐ博士の寝室に向かっていた。「彼」にとってそんな計略は何度も彼女達にしかけて、その全てが失敗していたからでも あったが、今回の目標は、むしろ博士そのものにあるらしい。目に見えない「彼」の利き腕には、レニーの家から拝借した例の「本」と「人形」が 握られており、どうやらそれを使って博士に「何か」を仕掛ける事は間違い無いだろう。
やがて「彼」が博士の枕元に近づくと、熟睡している彼の耳元に 何かを囁き始めた。「彼」:「んね〜博士〜…アンタにちょ〜っと聞いてみたい事あるんだけど〜?」
しばらくして、博士の瞼や眉間が小刻みに震え出した。博士の夢現の中で、何か変化が始まっているらしい。
「彼」:「ねェ〜博士…博士が作りたかった「完璧な女の子」って、PPGだったの〜?」
博士:「…それは…そ…れは…うぅううううう〜…っっ」
「彼」:「だってぇ〜あの娘達って、実験中の事故で誕生したんじゃない。…て事は、失敗作じゃない?」
博士:「確かに…あれは予期せぬ…出来事だった…だが…」
耳元で話しかける「彼」の問いかけに、博士は無意識の中で苦悶の回答を続ける
「彼」:「認めちゃいなさ〜い…あの娘達は、失敗作だって。」
「彼」:「違う!…彼女達は…決して…けっして…け…っして…ちが…」
「彼」が、問題の核心に迫る言葉を吹き込み続ける。
博士:「あれは、あれは、あれは、あれは、アレは…アレは…アレは…アレ…は…」
夢の中でうなされる博士の表情が、さらに歪む。
「彼」:「あの娘達は、失敗作、だって」
粘りつくような囁きで、「彼」がさらに博士の無意識に干渉を仕掛ける。
やがて博士の頭の中に「彼」の囁く言葉が、グルグルと回転し始める。そしてその頭の中は「失敗作」という言葉が延々とリピートし続け、徐々に、しかし確実に 博士の思考と理性、感情を汚染してゆく。そして、眠っている博士の口から、呪文のようなうわ言が漏れる。その言葉こそ、「彼」が望んでいた言葉だった。
博士:「…あれは…失敗作、だ…った…」
その言葉に、「彼」が口元をさらに緩ませ、囁く 言葉を続ける。
「彼」:「あ〜らそうだったの〜?それは残念ね〜…だったら…」
さらに誘惑の言葉が続く。
「彼」:「…じゃあこの際、ちゃんとした「完璧な女の子」、作っちゃえば?」
その言葉に、 夢の中の博士が一瞬、言葉を飲む。
博士:「…完璧な、女の子…?」
「彼」:「そう、「完璧な女の子」。」
「彼」のこの言葉が、博士の心の奥底の黒い欲望を さらに刺激する。
「彼」:「貴方の永遠のあこがれで、目標で、一番欲しかったもの でしょう〜?…だったらぁ、あんな失敗作で満足する事はないんじゃない?ねぇ?」
博士:「…失敗、作…?」
「彼」:「…そうよ、あんな失敗作!」
やがてうなされていた博士の表情に、力強い決意の ようなものが浮かんできた。
博士:「…そうだ。今度こそ、今度こそ…完成させるのだ…完璧な… 女の子を…!」
博士の口から漏れるうわ言が、だんだんはっきりと聞き取れるくらいに力強く、声高になる。しかし、その声でもなお博士の意識は目覚めない。
「彼」:「そうこなくっちゃ〜!」
博士:「創るぞ…創るぞ!… 今度こそ…」
「彼」:「そう〜、その意気よ博士、ガンバって作るのよ〜…。」
やがて博士の表情が不敵に、含み笑いを浮かべ始めた。
やがて博士の寝息が穏やかになり、寝室は再び静寂に包まれる。
彼の口からは夢の中で呟く、 ある決意の言葉が壊れたターンテーブルのように洩れ続けている。
博士の口から漏れる言葉が、自分の思い通りのものであるのを改めて確認すると、「彼」は満足気に うなずいた。その寝室からの去り際、「彼」は駄目押しとばかりに、博士の寝顔の頬に軽くキスして、悠々とこの家を後にした。
そして博士のベッドの傍らには、あの 例の「本」と「人形」が丁重にそえられていた。「彼」:「さぁ〜面白い事になってきたワね〜!明日になったらも〜っと面白い事になってるカモよ〜?…後は始まって からの御楽しみ〜ハァ〜ハハハハハハハハハァ!!」
バブルス:「…ねえ、どうして博士は朝から研究室にいるの?確か今日は…」
次の朝、食卓のテーブルの一角に、博士の姿はなかった。
普段と違った三人だけの食卓の風景に、少し不安になったバブルスが問いを発する。ブロッサム:「今日は実験用の薬品を買出しに出かけるって言ってたのに…なんか変ね?」
ブロッサムも又、突然の博士の突飛な行動に少し 面食らっているようでもあった。
バターカップ:「せっかく面白そうなトコに行けると思ったのに〜つまんない!」
バターカップはたいして不安も見せず、折角の休みなのに外出出来ない事に不満を露わにしていた。
ブロッサム:「仕方ないわ。博士も何か急な用事を思い出したんだと思うし…でも、朝ゴハンもとらないで研究室にこもるなんて、ちょっと心配…」
バブルス:「じゃあ、今日は博士の御手伝い〜!」
バターカップ:「バブルスはダメ〜!絶対薬を勝手にいじって実験台無しにするから。」
バブルス:「ひっど〜い!バターカップだってこの前フラスコ落として割っちゃったクセに!」
バターカップ:「あれはバブルスがぶつかって…!」
ほどなく軽めの言い争いを始めた二人に、お姉さん役のブロッサムが止めに入る。
ブロッサム:「二人とも!…今日は家で静かにしてましょ。それに久しぶりにヒマだし、テレビでも見るとか、本を読むとか…」
バターカップ:「あたしは外で遊びたいの!最近は悪い奴も町で暴れてないし、怪獣もやってこないし…こんなんじゃあたし達 ストレス溜まりっぱなしだよ!」
人一倍お転婆なバターカップが、不満をぶちまける。それを見て、 バブルスがいかにもバブルスらしい提案をする。
バブルス:「…じゃあ、PPGごっこは?」
バターカップ:「…はあ…」
いつもらしいバブルスの提案に、バターカップもいつもの様にあきれて、怒る気にもなれずため息を漏らした。
ブロッサム:「じゃあ、市長サンのトコに行ってみない?社会見学にもなるし。」
バブルス:「さんせ〜い!。」
バターカップ:「…ま、暇つぶしにはなるか…」
リーダーのこの提案に、バターカップも妥協した。外出出来ないよりはまだマシな 選択だろう、と彼女は思った。バブルスは相変わらず無邪気な様子だ。
ブロッサム:「それじゃアタシ、博士に断ってくるワね!」
バブルス:「あ、あたしも!」
バターカップ:「アタシも!」
ブロッサムが律儀に博士に挨拶しに向かう。 残りの二人も彼女に続いて付いて文字通り、研究室の入り口まで飛んでいった。
入り口のドアを静かに開け、恐る恐る覗きこむ。ブロッサム:「あの…博士?」
博士は、入り口に背を向けて机に向かい、何かの設計図を書いている様だった。あるいは、何かの 数式の計算に没頭いているのかもしれない。とにかく、難しい数式や法則を呟きながら何かの研究に夢中の彼の耳に、ガールズの言葉は届きそうに無いみたいだ。
バブルス:「あのねハカセ…アタシ達、市長サンのトコに行ってくるから…」
バターカップ:「あ、朝ゴハンちゃんと暖めなおして食べてね…」
余りの迫力に、ガールズの言葉もか細くなっていた。
PPG:「いってきま〜す!」
いつもとは違って珍しく、玄関から飛び立つPPG。
一方、博士は片手でコーヒーをあおりながら、なお計算に励んでいた。博士:「あの実験は偶発的なアクシデントでPPGが誕生した のだから、今度は完璧に、完全に計算された環境でシュミレートするのだ。…そして、その為にも一刻も早く、実験プラントを完成させなければ…!」
博士の他、誰もいない実験室に、狂喜にも似た独り言が空しく響く。
それから三日の時間が流れた。
ユートニウム博士はガールズ達に目も呉れず、相変わらず「例の」実験プラントの設計と製作に没頭していた。
驚くべき事に 博士はこの三日三晩、睡眠も食事も、休息もとらず、濃いコーヒーだけをあおりながら作業を続けていたのだった。頬はこけ、目は充血し、顔色は目に見えて 蒼ざめ、顔には不精髭で飾られ、白衣も垢と薬品と埃で汚れきっていた。
二日目の昼頃を過ぎたあたりから、さすがにガールズ達も心配になって、研究室の様子を 覗おうとするが、その度に博士に追い返された。その気迫たるや、常人のものとは明らかに違う狂気を含んだものであった。バブルス:「…ねえブロッサム、博士…大丈夫かなぁ…?」
バターカップ:「そんな暢気な事言ってる場合じゃないでしょ!ろくに食事も取ってないんだよ!死んじゃう よ、あれじゃ!」
バブルス:「そんなの…そんなのヤダァ!」
途端にバブルスの目に、大粒の涙が溜まる。
ブロッサム:「落ち着いて二人とも!…こうなったら無理やりでも博士を休ませなきゃ…!」
バブルス:「無理やり?」
バターカップ:「そうでもさせなきゃ本当に死んじゃうの!」
ブロッサムとバターカップが早速行動を起こし、少し遅れてバブルスも理解したのか、後に続く。
研究室の入り口は以外にも静まり返り、先日までの忙しさがまるで 嘘のようである。その静寂が、かえってガールズの胸中を不安で満たす。
リーダーのブロッサムが勇気を振り絞り、研究室のドアをそっと開く。ブロッサム:「あのぅ…博士?」
静けさだけが辺りを包み込んでおり、博士の怒鳴り声は聞こえてこない。
代わりにブロッサムの眼中に飛びこんで きたのは、巨大な実験プラントらしき機械の前で、うつ伏せに倒れた博士の姿だった。
頭の中が真っ白になるのを辛うじてこらえて、ブロッサムが二人に向かって叫ぶ。ブロッサム:「バブルスとバターカップは博士を寝室に運んで!あたしは薬を取ってくる!」
バブルス:「博士、死んじゃったの…?」
バブルスが大粒の涙を零しながらバターカップに尋ねる。 その質問にバターカップが過敏に反応する。
バターカップ:「縁起でもない事言うんじゃないの!まだ 生きてるよ!」
そう声高に答える彼女の目にも、いつの間にか大粒の涙が溜まっていた。
幸い博士は過労で倒れており、泥のように眠っているみたいであったが、バブルスもバターカップも半分泣きそうになりながら博士を寝室に運んでいった。
ブロッサムは 救急医療のガイドブックの応急処置の欄をにらみながら、処方箋を確かめていた。
元々博士が遺伝子工学の権威だった事もあって、医学の本は山のようにあったので、 ブロッサムも少しは心得があると自負していた。ただし、根本的な医者を呼ぶという基本的行動を、この時点で三人とも頭の中には浮かんでいなかった。それだけ大きく 動揺していた、という証拠だろう。
もちろん、博士と一緒にあった実験プラントの事など、知る由も無かった。
その次の日の朝、博士の眠るベッドの脇に、健気にも付きっきりの看病に疲れて添い寝しているガールズの姿があった。
その間にも、幼稚園に欠席届を出し、事件の際には 極力短時間で事件を解決し、食事も博士の寝室に運んで看病しながら取るという、熱の入れ様であった。そして昼頃、それまで熟睡していた博士が、ようやく意識を取り戻した。
それまで蓄積された疲労に驚きながらも、身体を起こす彼の胴回りに、ガールズが眠っていた。
博士:「…一体、何が、どうなっているんだ?」
不思議な事に、博士はそれまでの行動の一切を思い出す事が出来なかった。ただ、何かを作っていたという意識だけは僅かに 脳裏にこびりついていたが、その先がどうしても思い出せなかった。そして、自分がベッドの上にいる事も、自分の身体に残っている疲労も、そしてベッドの周りで眠っている ガールズの事も…。
兎にも角にも、身体の節々が痛かった。何より、まず空腹が酷かった。
何か腹の中に入れて、それから又休むとしよう。そう考えて、ガールズ達を起こさないように そっとベッドを降り、頼りない足取りで台所に向かう。
棚の一角からパンを、冷蔵庫からハムの塊を取り出し、交互にかぶりつき、合間にオレンジジュースを流し込み、ようやく一息つく。
胃袋を満足させて、再び床に就こうとする間も、博士は記憶の不可解な隙間を懸命に思い出そうとしたが、やはり無理だった。 疲れているせいだろう、休めばきっと思い出す だろうと考えて、再び眠りに就く。
その眠りの中で、再び「彼」の囁きが博士の頭の中で渦を巻く。「彼」:「今度こそ…「完璧な女の子」を創るのよ…!」
しばらくしてPPGが目を覚ました時、時計の針は夜の十時を 回っていた。
眠い目をこすりながら、薄暗くなった部屋の辺りを見回し、見当たらない博士の気配を探す。しかし、見かけるのは博士と自分以外の他の二人だけである。
ようやくブロッサム が部屋の電気を付けて、博士の姿を確認しようとするが、肝心の患者の姿は何処にもなかった。
少し経ってようやく目が馴れた他の二人も、博士の姿のない事に気付き、他の部屋を探し始める。ブロッサム:「バブルスはリビングを、バターカップは外を探して!私は研究室を探してみる!」
バターカップ:「 行動、開始!」
三人がそれぞれの場所に散っていく。
心配の余り、現実的にありえないような所までリビングの隅々を、バブルスは丹念に探す。
バターカップは博士の] 名を呼びながら、心当たりを盛んに飛びまわり、邪魔な障害物をぶっ飛ばして回る。
そしてブロッサムは研究室の開け放たれたドアの奥を目の当たりにし、唖然としていた。博士はあの 実験プラントの前にいた。
博士は実験に必要な材料を装置のタンクに注ぎ、プラントに接続されたパソコンに実験行程のプログラムを組み込んでいた。
博士の格好は先に過労で倒れてから ガールズに介抱されてベッドに寝かされたあの時のままで、髪は寝癖でくしゃくしゃのまま。汚れが染みこみ、しわが刻まれたくたびれたシャツのままで実験の準備らしき作業に没頭していた。
その顔は、先に不眠不休で作業していた時の物凄い表情のままで、さすがのブロッサムも部屋の外で声を掛けられずにいた。
困惑している彼女の元に、他の二人の声が近付いてくる。バブルス:「ブロッサム〜!」
バターカップ:「博士は見つかった〜?」
硬直したままのブロッサムを見つけた二人も、その視線の先の向こうを 目の当たりにし、絶句した。
その時、実験プラントは鈍い機械音を唸らせながら、実験開始の指示を待っていた。
やがて、装置の脇のパソコンに全ての情報を入力し終えた博士が、自分を 鼓舞するかのように叫び声を上げた。博士:「さあ…これで全ての準備は完了した!…今こそ、長年の私の夢が、実現するのだ…!」
バブルスもバターカップも、その台詞の意味を理解出来なかった。
ブロッサムはその台詞の一言一言を確かめながら、その意味する事実を懸命に推理した。ブロッサム:「博士の…夢?」
その言葉の意味にブロッサムがはっとする。そして、装置の一角に詰め込まれた実験材料を見て、瞬時に理解しかけた。
その材料とは、ブロッサム:「お砂糖と、スパイスと、 …何か…それに…!」
見覚えのある材料二種類の他に、装置の一角に収められた材料の中に、あのレニーの「本」と「人形」が混じっており、 ケミカルXとおぼしき濃い色の薬品は特に厳重に薬品ケースに収められ、パソコンで入力された実行プログラムに従ってその注入される量とタイミングを完璧に管理されていた。
そして、ブロッサムは 博士が何をしようとしているのかを、瞬時に理解した。…博士は「完璧な女の子」を創造しようとしている!
…しかし、何故?
彼女は博士のこの不可解な行動を理解出来なかった。
博士はもう一人、PPGを作ろうとしているのか?
…それとも博士は…?考えれば考える程、彼女の思考がさらに混乱する。
その間にも、実験プラントの中では化学反応が急速に進行し、 さらに完全に管理された装置の中で、反応は博士の思惑通りに進行していた。
化学反応の光はさらに実験室を満たし、まぶしさの余りその場にいる全ての人物が目を覆う。その光の中で、博士は パソコンに表示される情報に注意を注ぎながらも、最後の化学反応を起こす為のタイミングを計っていた。バブルス:「博士…何なの、これ?!」
まばゆい光に耐え兼ねて、 バブルスが叫んだ。しかし答えは返ってこない。
バターカップ:「博士!!!」
バターカップが声を荒げる。しかし、やはり答えは無い。
事前に 用意していたのか、何時の間にか博士は対閃光スコープを装着しており、このまぶしい光の中でも対して慌てる事無く実験の成り行きを監視していた。やがて、その時がやってきた。
すかさず博士が傍らのレバーを一気に引き下ろし、実験装置の最後のスイッチが入った。
途端に激烈な化学反応の音と供に溜まった閃光が一気に破裂し、実験装置に強烈な衝撃が走る。ズドドドドオオオオオオオンンン!!!!!
強烈な爆発音と衝撃で、PPGも博士も壁に打ち付けられる。
爆発音の後、しばらくの間、奇妙な 静寂が支配する。
余りの衝撃に意識を失いかけた博士だったが、最後の化学反応が起こったと思われる装置の中心に目線を移し、もうもうと巻き起こる埃と煙の奥を固唾を飲んで見守る。
やがて、 その奥に僅かに蠢く人影らしきものがその目に映る。
それは、ガールズも同等だった。バターカップ:「…いって〜…もう何なんだよ、これ…?」
バブルス:「博士…これ、何の実験?」
何の事だか分らない二人の傍で、ブロッサムはやはり、強張っていた。
ブロッサム:「博士…」
視線の 向こうを見守っていた博士の表情が、その向こう側の存在を確認するや、俄かに緩んでいく。
博士:「…やった…やったぞ…!」
徐々に薄れる煙の中から、子供のような影がハッキリと輪郭を露わにする。やがて輪郭はその詳細な姿を浮き立たせてゆく。
それは、まさしく子供だった。
明らかに幼稚園児とも、小学生とも つかないその子供は、女の子だった。輝くばかりに可愛らしく、美しい少女。
頭の両側にまとめられたブロンドの髪は一見、バブルスのそれにも似ていて、つむじらしい場所に結ばれた赤いリボンは まさしくブロッサムのそれにもよく似ていた。そして丁寧に調髪された前髪は、バターカップのそれにも良く似ていた。
大きく見開いた瞳は海とも宇宙ともつかない位深い色を湛え、整った顔立ちは生来の 品の良さを演出していた。フリルの付いたワンピースは控え目な可愛らしさを放ち、そこから伸びた手足は石膏の彫像のように滑らかだった。
緩んだ表情の博士の目に、喜びの涙が溢れる。
それとは 対照的に、ガールズは何が起こったのか未だに理解出来なかった。
ブロッサムを除いて。しかし、彼女もまた、博士が何の為にこの少女を創造した理由など、知る由もなかった。
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