第3話 「謀略の都タウンズビル」 キャプター2

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 バルドがタウンズビル近郊の病院に担ぎ込まれてから、八日目の夕方。

 体力を回復したバルドが退院し、タウンズビルに戻ってきた。
 JPPGが病院まで迎えに行き、居候先の秘書べラム宅の玄関前には、 ミス・べラムとマサトシが彼女達を待っていた。
 家の中には、バルドの歓迎の為の祝宴の準備が整っており、二人は彼女を迎えに行ったJPPG達を待っていた。
 やがて、地平線の彼方から、白と青と赤のストライプが 伸びてくる。

JPPG:「マサトシ、ミス・べラム!ただいま〜!」

 山吹色の歓声と共に、JPPG達が鳥のように舞い降りてくる。そして、たよりない足取りで、やや遠慮がちのバルドがマサトシ達の 前に立ち挨拶する。

バルド:「…あのぅ…こんにちは…」

ミス・べラム:「ようこそ、バルド!」

マサトシ:「みんな、君が来るのを楽しみに待ってたよ。さあ、 中へ!」

ブルー:「今日は、バルドの為に御馳走た〜く山作ってぇ、歓迎パーティー開くの。ね?」

ブレード:「パーティーの後は皆でバルドの為に用意してたものがあるんだ!期待してて ね?」

ブライト:「二人とも!ネタをばらし過ぎよ!折角バルドをびっくりさせて喜ばそうとしてるのに…」

 そんな些細な揉め事も、嬉しさと緊張感でいっぱいのバルドには心地よい息抜きだった。

 やがて、一人住まいとは思えない程贅沢に広い屋敷の、食堂に案内されたバルドは、目を丸くした。
 テーブルの飾り付けはもちろん、秘書べラムの御手製の御馳走が所狭しと並べられていたし、部屋の飾りつけも明らかに、 何かの祝宴の為にわざわざ時間をかけて装飾されていたものだ。
 JPPG達の言葉を信じるならば、これらは彼女の歓迎パーティーのためだけに用意されたものなのだ。そして、テーブル中央のひときわ大きな椅子に案内されて 着席したバルドの目の前には、生クリームとチョコレートで飾り立てられた大きなケーキが置かれており、その中央に飾られたビスケットに
「貴女の家にようこそ!」
 という チョコレートの文字が達筆な調子で描かれていた。
 やがて、バルドから向かって右側にマサトシとミス・べラムが、左側にJPPG三人が着席した。
 ミス・べラムとJPPGにせかされて、少し緊張気味のマサトシが歓迎の 挨拶を行った。

マサトシ:「本日は…この家の居候代表として、新しい家族の一員であるバルドを歓迎出来る事は、誠に嬉しい限りであります。では、家長のミス・べラム、乾杯の音頭をよろしく御願い致します」

 余りにぎこちない挨拶に可笑しくてたまらない様子の秘書べラムだったが、マサトシの指名を受けて、ジュースを満たしたグラスを掲げた。

ミス・べラム:「それでは…みんな準備はいい?…乾杯!」

全員:「乾杯!!」

 彼女の音頭と共に、ジュースを一気にあおぐJPPG。
 一口飲み干してから、マサトシがテーブルの上の料理を切り分ける。

マサトシ:「食べたいものが あったら遠慮無く言ってね?」

ブレード:「それじゃマサトシ、そこのケーキは?バルドも気になってるみたいだし…?」

ブルー:「あたし、そこのミートパイ頂戴!」

ブライト:「ブルーはまだ!バルド…本当に遠慮しなくていいのよ。今日の主役はあなたなんだから…」

 ようやく緊張がほぐれてきたのか、バルドも少しづつ、料理に口をつけるようになった。嬉しさの余り胸が一杯で、料理も なかなか喉を通らない様だ。
一方のJPPGは育ち盛り全開、テーブルに並べられた料理の大半をあっという間に平らげてしまった。
 食べ物の大半が空になる頃にはバルドの緊張もすっかり解けて、JPPGやマサトシ にすがり付いてはしゃぐ事が出来るまでにリラックスしていた。そんな彼女の様子を見て、皆心から彼女の事を想って安堵した。

メインディッシュが終わり、デザートのプリンを並べていたマサトシがJPPGとバルドに話しかける。

マサトシ:「後でバルドとJPPGに紹介したい友達がいるんだ。後片付けが終わったら、僕の部屋に来てくれない?」

ブルー:「…でも夜になっちゃうよ。まだ誰か御客サンが来るの?」

マサトシ:「そうじゃなくて…まあ来れば分かるさ。」

ミス・べラム:「…でも、就寝時間は厳守だからね?」

 咄嗟に秘書べラムが釘を刺し、マサトシも大きく頷いた。

マサトシ:「大丈夫ですよ、紹介だけですから時間はかからないし」

 そんなやりとりをよそに、バルドはソファーに身をあずけて、少しばかり眠りについていた。昼間の緊張と嬉しさの狭間で、さすがに疲れて いたのだろう。傍らには彼女に寄り添う様に、ブライトとブレードも眠っていた。

ミス・べラム:「ブルーは眠くならないの?元気ねえ?」

ブルー:「うん!あたし、嬉しい時はとっても 元気が出るんだもん!」


その日の夜7時過ぎ、自分の部屋に入ったマサトシと、一緒に彼の部屋に入ったバルドとJPPGは、パソコンのモニターに視線を集中させていた。
 数日間の音信不通の後、ようやくネット環境を整えたマサトシが集会に 復帰した時、他の仲間達は彼と同じく、ジーンの送った資料を元にコピーPPGを作り上げたと、溜まったメールの中の一通に記載されていた。

ブレード:「これ何?」

ブライト:「インター ネット!世界中のパソコンを繋げる電子情報網よ。」

ブルー:「…よくわかんなイ。」

マサトシ:「…まあまあ、これで世界中のいろんな所で、いろんな国の人達と瞬時にいろんな事が 出来るんだ。そう…実際に動かしてみれば分るかな?」

バルド:「あの…私達に紹介したい人って、誰なの?」

マサトシ:「〜大丈夫、すぐに会えるよ」

 軽く目配せすると、 マサトシがキーボードを操り始める。
 やがてモニター上に7つのウィンドウが展開され、馴染みの顔が現われる。

ミハエル:「ひっさしぶりぃ…って間を空け過ぎだよ!」

マリーナ: 「…もう、みんな心配してたのよマサトシ。また何か無茶したんじゃないかって。」

ウォン:「…あれぇ?背景が…なんかいつもと違うなあ…おまえ、部屋を模様替えしたのか?」

マサトシ :「ごめんみんな、連絡が遅れて…」

 いかにもバツが悪そうな様子で謝るマサトシ。そこに、JPPGが横から顔を突っ込んだ。

ブルー:「…何だか不思議ーッ」

ブライト: 「…ねえマサトシ、本当に外国の人とお話してるの?」

 JPPG達がモニターを覗きこむや、他の7人の仲間達と彼等のPPG達の口から、関心の声があがった。
 突然画面に現われたJPPGを見て、ジーンが尋ねる。

ジーン:「その様子だと…成功したみたいだな!マサトシ」

マーシュ:「じゃこの子達…マサトシのコピーPPG?可愛い〜!」

シム:「…でも、何か物足りないような 気がするのは…気のせいか?」

マリーナ:「いいじゃんそんな事!〜でさあマサトシ、この子達何て名前なの?」

 途端に、ウインドウの回りから、JPPGと同じようなコピーPPG達が興味深気に現われる。

「何々?」「あたし達の仲間?」「仲間じゃなくて
姉妹でしょ!」「ち、ちょっと…もう少し中に
寄ってよ!画面に映らないでしょ!」
「YEARRRRRRRRRRRRRRRR!!!」
「…でも 何か頼りなさそうな感じ?」「お前が言うな
お前が!」「〜もうじれったいな〜早く
タウンズビルに行こうよ〜」「…でさあの娘達、
あたし達より強いの?」「あの娘達だってPPG
なのよ。強いに決まってるでしょ!」

 画面の中や外から、JPPGと同じようなコピーPPG達のにぎやかな声が漏れてくる。余りの騒然さにジーンがあまたのPPG達を仕切り出した。

ジーン:「みんな静かに!…じゃあしょっぱなで申し訳ない が、俺のEPPGから…」

 ジーンの映るウィンドウの周囲から、派手な髪型のPPGが唐突に現われる。

EPPG:YEARRRRR!!!私達、
エナージョン・パワーパフガールズ!!

ボルト:「俺がリーダーのボルト!」

ブレア:「あたいはブレア!」

バーン:「私はバーン…よろしく!」

 どこから持ち出したのか、唐突にボルトがギターを取り出して大音響でかき鳴らし始める。それに合わせてブレアが金切り声でヘビメタを絶唱し、モニター画面に鋭いノイズが走る。

ブレア 〜YYYYYYEEEEEEEEEEEEAAAAAAAARRRRRRRR!!!!!

バーン:やかましいい〜!!!!

 間もなくジーンの ウィンドウの外の一角で三人の大喧嘩が始まり、ジーンがそれを止める為に一時的にウィンドウを閉じる事を余儀なくされた。

ジーン:「…悪い。後で又開くから」

 と一言断って、彼はウィンドウを閉じた。 続いてマーシュが後を引き継いだ。

マーシュ:「〜イギリスのあの娘達、根はいい子達なんだけど…騒々しいのがちょっとねぇ…あ、次は私の、」

FPPG: フラワー・パワーパフガールズで〜す!

 マーシュの席の後ろからパステルの色調の、いかにも女の子らしい衣装のPPGが現われた。

ベル:「あたしが、一応リーダーの、ベルです!」

バード:「あたし、バード!」

ブルーム:「…あの…あの…」

マーシュ:「…ほら、あの子達に挨拶して。」

 最後に一人恥かしがっている短い金髪の女の子が、マーシュに せかされてようやく挨拶する。

ブルーム:「…はじめまして…私、ブルーム」

 一通りFPPGの紹介を終え、マーシュが言った。

マーシュ:「〜で、次は誰の番かしら?」

 咄嗟に切り出したのは、この人物だった。

シム:俺!俺!俺!!!!

 周囲が唖然とするのも構わず、シムが一方的に身を乗り出して強引に割りこむ。

シム:「いいかマサトシ!よ〜く耳ン穴かっぽじって見とけよ!!これが俺様の…」

ブラスト:「それ言うなら『目ン玉ひん剥いて〜』だろ!」

 マサトシが指摘するより素早く、かさを被った 赤い人民服のPPGがツッコミを入れた。

バースト:「全然啖呵になってないよシム!じゃあ改めて…」

KPPG:「私達は大韓…
コリアン・パワーパフ ガールズ!!!

ブラスト:「私が、頭目のブラスト!」

ビーム:「ビームで〜す!」

バースト「バーストだゼ!!!!」

 何時の間にかKPPGがその場を 仕切っていて、シムはかやの外に追っ払われていた。画面の外でシムが何かわめいていたようだったが、三人は目も呉れなかった。
 完全にKPPGの尻に敷かれていたシムだったりする。

 そして、次の人物にバトンを渡した。

ミハエル:「〜ゴホン!…では俺のPPG、前に出てきな!」

 一応改まってから、ミハエルが自分のPPG達を呼び出した。やがて画面の下の方から、厚着の服装のPPGが姿を現した。

RPPG:我等、ラジアント・パワーパフ
ガールズ!!!!!

バレル:「…あ、あたし、バレルです…リーダー、やってます…」

ブラー:「僕、 ブラー…」

ビロウ「我は、ビロウ…よろしくな!」

 全世界から次々と紹介されるコピーPPG達。それを聞いているうちに、マサトシ達も不思議な感慨に浸っていた。

ブレード: 「…これが、あたし達の姉妹なの?…こんなに、沢山いるなんて…すご〜い!」

ブルー:〜すてき!

マサトシ:「…そうかあ…みんなも僕と同じ様に コピーPPGの創造に成功していたんだね!」

 途端ににぎやかになったモニター画面の前で、マサトシも大喜びだ。

シム:「そう言えば…お前この数日、何で音信不通だったんだ?又何かやらかしたのか?」

 咄嗟に話題を突っ込まれたマサトシは、改まって口を開こうとした。そこへ、

ミス・べラム:「マサトシ、もうそろそろこの子達を寝かしつけないと…」

 マサトシの後方にミス・べラムが現われた。 途端に画面が騒然となった。

マサトシ:「あ…ミス・べラム、すみません…紹介だけ済ませたらすぐに寝かしつけますから。」

マリーナ、シム、ミハエル、マーシュ、ウォン: …ミス・べラムゥ????????

ジーン:「…ああそう言えばお前等、初対面だっけな。」

 ようやくEPPGの喧嘩を仲裁し終えて、改めてウィンドウを開いたジーンが、さらりと言って のけた。
 周囲の騒然さを察して、マサトシが説明を始める。

マサトシ:「…実は僕、今タウンズビルの、秘書べラムの自宅にいるんだ。」

ミス・べラム:「…あら、ベクターシュタイン博士、 御久しぶりです。」

ジーン:「御手数をかけさせてすみませんでした…でもこれで、悪党三人に対する抵抗勢力が出来ました。あ、コピーPPGの事はくれぐれも…」

ミス・べラム:「承知して おりますわ、博士。この子達の事はここにいる子供達の他には、内密にしていますから。」

 しばし大人の事情の会話が続いて、マサトシが説明の続きを始める。実験の事、JPPGの事を説明してようやく、彼は皆にJPPGを紹介した。

ブライト:「あたしはブライト!」

ブルー:「あたし、ブルー!」

ブレード:「あたしの名はブレード!」

JPPG:「私達、 ジャスティン・パワーパフ
ガールズ!!!」

 自己紹介が終わるや、モニターの向こうのコピーPPG達から、歓迎の挨拶がどっと沸いた。
 そして、マサトシの友人達が次々と挨拶を交わす。

ウォン:「おう!」

ミハエル:「よろしくな!」

 一方、皆が歓喜に沸く中、一人暗い赴きのキャシーが重い口調で尋ねる。
 そして、それに気付いた一同が皆、途端に静まりかえった。

キャシー:「…JPPGと秘書べラムの事は分かった…で、脇の女の子、誰?」

 キャシーが尋ねた女の子とは、マサトシの席の傍らで控え目な態度でモニターに見入っていたバルドの事に間違いなかった。 明らかに嫉妬の炎がキャシーの全身を包んでいたが、マサトシは彼女を宥める事も含めて、彼女の身の上を説明した。
 一通り説明を聞いて、ただ一人を除いた一同が、バルドの身の上に同情していた。

マーシュ: 「…そうだったの…でも、これからは私達も御友達よ。私も嬉しいわ…だって、こんな可愛い妹みたいな女の子と、仲良しになりたかったもの。ねえみんな?」

ミハエル:「…俺も、大賛成!」

シム: 「…ッ しょうがねェなァ…」

皆が彼女の事をとても好意的に迎えた事で、マサトシもバルドに挨拶を薦めた。

マサトシ:「…ほら、バルドも挨拶しなきゃ」

バルド:「…あ、え?」

 思いがけない展開にうろたえたバルドがマサトシに問い返す。

バルド:「あの…紹介したいトモダチって…」

 マサトシが力強く頷く。そしてJPPGもバルドを励ます。

ブライト: 「大丈夫だよバルド!みんな、あなたと仲良くなりたいんだから、勇気を出して!」

 始めは躊躇していたバルドだったが、マサトシとJPPGに励まされてモニターの奥の新しい友人達に挨拶した。

バルド: 「…みなさん…ありがとう。わたし…とっても嬉しいです。」

 本当は嬉しかったのだが、緊張の余り途中で泣き出してしまったバルド。それでも、出来るだけ嬉しさを画面の向こうの沢山のトモダチに伝えたくて、彼女は無理やり微笑んで みせた。
 普段は強面のシムも、まんざら悪くない様子で、顔を真っ赤にしていた。マリーナは彼女らしい、満面の笑みで大喜びだった。ジーンはその様子を見て、マサトシと秘書べラムにVサインを送った。

ウォン: 「ネット越しでなかったらなぁ…ちょっとした腕自慢を披露出来たのに。マサトシが羨ましいゼ!」

ウォンが嬉しさの余り語ったこの言葉を、キャシーは聞き逃さなかった。
そして彼女の周囲の近寄りがたいオーラがより強くなった。

マリーナ:「…ほら、キャシーも挨拶して…マサトシも困ってるでしょ?」

押し黙ったままのキャシーが、突然絶叫した。

キャシー:「…マサトシの…
馬鹿ぁ―――――――――――――――――――――――――――――――ッッッッ!!!!!!!!!!!!

 絶叫と共にキャシーはウィンドウを閉じてしまった。

マサトシ:「…あぁッ、キャシー!?」

 思いっきり顔が真っ青になったマサトシと、あっけにとられる他の友人達。しかしバルドが受けた衝撃はそれ以上だった。
 又しても、自分のせいで大切な人の人間関係を壊してしまったのかと、十数日前の悪夢が瞬時に蘇る。
 それを目の当たりにして、マサトシが彼女を慰める。突然ウィンドウを閉じてしまった彼女の事で頭が一杯の彼だったが、目の前でショック状態のバルドをしっかりと抱きしめ、懸命に宥める。まるで自分自身にも言い聞かせるように。
 一方、モニター越しとは言え、バルドの精神的ショックを目の当たりにした他のコピーPPG達やジーン達も、大いに慌てまくっていた。いくらキャシーがマサトシに特別な感情を抱いていたと言っても、先に彼女の取った行動は周囲の予想 範囲を完全に逸脱していたのだ。
 とりあえずマサトシとバルドが平静を取り戻した所で、周囲も二人を気遣って暖かい言葉を送った。

ジーン:「〜バルドは悪くないよ、もちろん、マサトシも、キャシーもな」

マリーナ:「〜こんな事になってから何なん…だ、けど、キャシーって、その…やきもち焼きだから、ねえ?」

 一方、ただ一人周囲の出来事から取り残されていたウォンは、

ウォン: 「…俺、何かマズい事言ったか?」

 しばらくして、再びウィンドウが開いたが、そこにキャシーの姿はなく、日本風の着物をまとったPPGが申し訳なさそうな顔つきで立っていた。

梅華:「〜キャシーがああなって 申し訳ないです。まだ私達の紹介もしてなかったのに…」

ビロウ:「それにしちゃあ、何かちゃっかりしてないか?」

ブレア:「いいじゃん!まだ新入りの為に紹介するのが残っているんだから!」

弁天:「まだあちき達の紹介が始まってないよ!」

梅華:「それじゃあ改めまして、私達は…」

APPG:エイジアン・パワーパフ
ガールズ で〜す!

梅華:「あたしは、梅の花と書いて…梅香(バイカ)!」

芭蕉:「あたい、松尾芭蕉の名前を取って…芭蕉(バショウ)!」

弁天:「あちきの名前は、 七福神の一人と同じ名前で…(ベンテン)!」

 さすがにあの騒動の後で、周囲もなかなか思う様に盛り上がらない。そこでAPPGが改まって、バルドに語りかける。

芭蕉:「…あのね、バルド…」

弁天:「キャシーってさあ、マサトシの事とッッッッッッても大好きだからさあ」

梅華:「それで彼の事でとても敏感になってるだけだから、その…そんなに気にしないで。」

芭蕉: 「それに、私達、」

APPG:「バルドの事、もっと知りたいし、もっと仲良しになりたいんだから、ね?」

 この慰めの言葉を聞いて、ようやくバルドも少しだけ、精神的に立ち直った様っだった。そこに、

ブレイズ:「お〜い!自己紹介の時間が長いぞオAPPG!

ブレイク:「俺達だって、ステキなカノジョ達 仲良しになりたいんだゼ!」

バーディー:「ドゥーユーアンダスタン、ベイビー?」

 APPGに横槍を入れたのは、以外にもストリートカジュアルに身を包んだ PPG風の少年達だった。

弁天:「もうちょっとバルドとお話したってバチ当たんないでしょ!横からしゃしゃり出ないでよ!」

梅香:「ほら弁天、後がつっかえてるんだから…ワガママ言わないの!」

 半ば強制的に退場させられた弁天。そして、入れ替わり早々、客観的に見て自己主張過多な自己紹介が始まる。

ブルー:「…貴方達、あの…男の子?」

バーディー:「俺達がオカマ野郎に見える訳が ないだろ!」

ブレイク:「俺達、」

HPPG:ハイドライド・パワーパフ
ガイズ!
ヨロシクぅ!!!

ブレイズ:マァイスウィートハニー、俺の名前はブレイズ!」

バーディー:「俺が、バーディー!」

ブレイク:「俺はブレイクってんだ!」

 早速、 女の子大好きのブレイズが、一方的にバルドに語りかける。落ちこみ気味のバルドも、彼の言動にすっかり面食らってしまった。

ブレイズ:マイハニー…人を好きになるって事は 何かとトラブルが付き物さ…でも挫けちゃ駄目だぜ!…愛は傷付け傷付けられて強くなるものなのさ…ガールズ・ビー・アンビシャス!

ブレイク: 「…ダサダサ…!」

バーディー:「〜聞いてるこっちが恥かしくなってくるゼ、全く…」

ブレイズ:「…お前等、ちったあ他人を労わるって事考えろよ!俺はな…」

 唖然と なっている周囲をよそに、ナンパのやり方でモメるHPPG。そこへ、

ビショップ:「あんた達、いつまで漫才やってんの!時間押してんのよ、もう…」

 唐突に発せられたこの怒鳴り声 で、HPPG三人のドツキ漫才は中断された。そして一方的にブレイズに話しかけられていたバルドも、すっかり言葉を失っていた。
 そして、JPPGとバルドの関心はいつの間にか、怒鳴り声の主に向けられていた。
 画面上のマリーナの 周囲から発せられたその声の主は一人から三人に増えていた。そして、瞬時に画面上に現われたのは、三銃士風の衣装と羽根飾りを付けたPPGだった。

ビショップ:「ビショップ!」

ブリーズ: 「ブリーズ!」

ブリッツ:「ブリッツ!」

SPPG:「我等、スパルタン・パワーパフ
ガールズ、見参!

 先の今風なHPPGと対照的に、SPPGの 口調はどこか古風な感じだった。そして、最も時代がかった口調で、ブリッツがバルドに声をかける。

ブリッツ:「我等が必要とあらば、いつでも呼ぶがいい。我等がどこにいようと、貴殿がどこにいようと、必ず貴殿の為に 駆けつけ参る!」

ブリーズ:「〜だからあ、その言葉使い、いいかげんに止めようよ…あたし達までHPPGみたいに変わり者みたいに見られちゃうよぉ…」

ビショップ:「そおかなあ…個性的だし、何より相手の印象に残りやすいし、いいんじゃない?」

ブリーズ:やだア!!!!あたし変わり者 じゃないもん!!!!!!こんなんじゃバルドに嫌われちゃうもん!!!!!!!!絶対にヤダぁ!!!!!!!!!!!!!!

バーディー&ブレイク: 「俺は断じて違う!!!!!」

 SPPGとHPPGの喧騒をよそに、マリーナが手際よくその場を締めくくる。

マリーナ:「〜これで終わりよね?」

ジーン:「…さすがに 24人もPPGがいるんじゃ、覚える方もたまったもんじゃないけどな…その内、写真付きファイルを拵えて送るよ」

ミス・べラム:「あの、そろそろこの娘達を寝かしつける時間ですので、詳しい 話は後程に…」

ジーン:「ええ、長々と付き合わせてすみませんでした」

 事実、そろそろJPPGも本当に眠そうだった。そして、マサトシ自身も何かと気苦労が増えた分、早めにベッドに潜り込みたい気分だった。
 別れの挨拶もそこそこに、皆はウィンドウを閉じた。ただ、一番最後にウィンドウを閉じようとしていたマーシュは、マサトシとキャシーの事を心配して、別れ際にこの言葉を語った。

マーシュ:「キャシーの事は私に 任せておいて…貴方の方だって、コピーPPGやあの娘の事で、以前よりも思い煩ってるって分ってるから…キャシーには私から話しかけてみるわ。だから…余り心配しないでね」

 もちろん、他の仲間もコピーPPG達も、マサトシに励ましの 言葉を送ってくれたが、彼にはやはり、キャシーとの別れ際の光景が胸の奥底に突き刺さったままだった。
 キャスター付き椅子に腰掛けたまま、しばし呆然のままのマサトシに、バルドが話しかけようとするが、彼女もあの光景を目の当たりにした せいで声を掛けるのを躊躇していた。それに気付いたマサトシが、バルドを慰める。

マサトシ:「…大丈夫だよ」

 愛おしむような手付きで、バルドの頭を撫でるマサトシ。彼の優しい眼差しも手伝って、バルドも少しだけ 安心した。そこへ、部屋の外の廊下からJPPGの声が聞こえる。

ブルー:「マサトシ〜おやすみのキスは〜?」

 この声を聞いて、ようやく二人も肩の力が抜けて、互いの口から笑いがこぼれた。
 やれやれ、と思い つつも、ようやく立ち上がったマサトシは、バルドを連れてJPPGの部屋へ向かった。


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