第4話 「スーパーパワー発動!」 キャプター4

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 タウンズビルの昼間。
 昼間のオフィス街は、人と車がごった返すいつもの活気で満ちていた。

 暫くして、遠くのほうから悲鳴が聞こえてくる。
 それも、一人や二人ではなく、悲鳴が束になってやって来る。
 そして、悲鳴の元である大勢の人間が、物凄い形相で逃げてくる。
 その大勢の人間の 向こうには、一台の大型装甲車が走ってくる。
 乗っているのは5つの緑色の人影。
 何時の間にかラスベガスで一仕事を追えて、はるばる砂漠を又にかけてタウンズビルに帰ってきたギャングリーン・ギャングだ。
 先の新聞の記事で五人の所業の全てを知っていた市民は我先にと逃げ回っていた。

エース:「ハハハハハハハ…見ろよ、あの様を!ラスベガスの仕事が相当に受けたみたいで、俺達ぁもう、大統領よりも有名人らしいぜ!」

リトル・アートロー:「でも追っかけがいなくて、俺達が追っかけてるのって、 馬鹿にしてない?」

グラバー:「BBBBOOOOOOOO!!!」

エース:「フン!」

 あっという間に、オフィス街の大通りは誰も居なくなってしまった。

エース:「それじゃあ改めて、凱旋パレードの再開と行くかあ?」

ビッグ・ビリー: 「〜エース、あれ、誰だ?」

スネーク:「ありゃあ、見たことがあるような…」

 誰も居ない大通りに、何時の間にか一人の小さな人影が5人の前に立ちはだかる。
 それはEPPGのボルトだ。
 だが、EPPGに見覚えの無い5人の反応は、今一つ釈然としない様子だ。
 腕を組み、不敵な表情で 仁王立ちのボルト。辺りは不気味な程、静かだ。

エース:「〜ほーう…イメチェンして俺達にリベンジ、ってか?」

 エースがこう言い放つや、5人が一斉に強化スーツを装着し、ボルトに襲いかかる。その時、ボルトの背後に、突然バンドセットが現れる。
 何時の間にかボルトの手には リードギターが握られ、ドラムの席にはバーンが、ボーカルのステージにはブレアが立っていた。そして、

ブレア:「YYYYEEEEEEEEEAAAA
AAAARRRRRRRRRRRR
!!!!!!!!!!!!!!」

 通常の人間なら一瞬で鼓膜が消し飛ぶ程の音量が、超ド級のマイクロ ウェーブと共に半径500メートル以内に充満する!
 それに負けじと、この日の為にストレスを溜まりに溜めたバーンが理性のリミッターを解除し、狂ったようにドラムを叩き鳴らす!
 そして、狂喜乱舞のボルトがギターをかき鳴らしながら、凄まじい雷鳴を撒き散らす!

 ロックに耐性があるギャングリーン・ ギャングも、この地球を破壊しかねないと思わせるへヴィーメタルには、度肝を抜かれた。それ以前に、そのまま脳細胞を破壊するかの如き重低音と高過ぎるボリュームは、五人の平常心を一瞬にして奪っていた。
 さらにマイクロウェーブと高電力、高電圧の電撃が強化スーツの繊細な電子機器に重大な影響をあたえて いた。

エース:「〜〜な…何が、どーなってんだ…お、御前達、この酷い音を何とか…しろお〜〜!!」

スネーク:「何言ってるか分かんないっスよ〜〜!」

ビッグ・ビリー:「〜俺の頭の中で、でっかい鐘がガンガン言ってるよ〜」

グラバー:「GGGYYYYYYAAAAAAAAAAA!!!!!!」

リトル・アートロー:「音だけじゃないだろ!ずっとシビレっぱなしなんだぞ俺達ぁぁぁぁぁぁ!!」

 一方、EPPGから半径500メートル外の広場の一角に、ジーンとマサトシがいた。
 ユートニウム博士の自宅地下の研究室を市長の許可を得て 一時的に借り受け、そこで即席で拵えたバリア発生装置をタウンズビルの3箇所に極秘に設置し、そこにまんまとギャングリーン・ギャングをおびき寄せたのだ。
 バリアの内部ではEPPGのスーパーパワーによるエネルギー攻撃で充満された状態であり、精密機械の塊の強化スーツは明らかに機能を低下させていた。
 そしてバリアの外は、中で戦闘が行われているとは思えない程に普段と変わらない静けさで、機械をあやつるジーンを覗き見るバルドも無邪気にはしゃいでいる位ののどかな空気に包まれていた。

ジーン:「〜まあ、今の所はこんな感じかな?」

マサトシ:「…でも市長さんも よく協力してくれたねえ?警察の誘導でこの辺りの住人はすでに避難して、僕達3人しかいないし」

バルド:「それで、これからどうするの?」

ブルー:「後は私達に御任せ!」

 バルドが振り向くと、耳に不思議な機械を取り付けたJPPG3人が立っていた。

バルド:「その、耳につけてるの、何?」

ジーン:エネルギー拡散装置。これが無いとJPPGでもあのバリアの中では活躍出来ないんだ」

ブレード:「後は、あいつらを刑務所にぶち込んでからゆっくり説明するよ、バルド」

ブライト: 「それじゃ二人とも、打ち合わせの通りに行くわよ!」

ブルー&ブレード:「御任せ!」

 そう二人が言うや、JPPGはいとも簡単にバリアの中へと入ってゆくが、JPPGは拡散装置の御蔭で普段のそぶりそのままに動いている。

 一方、積み重なるダメージについに強化スーツはオーバー ヒートを起こして機能が不完全になってしまった。
 しかし、それ以上にギャングリーン・ギャングが受けた精神的なダメージは相当なものだった。
 目に見えて5人がその場にへたり込むのを見て、ようやくEPPGが演奏を止めた。
 ほっと息をつく五人の前に、EPPGとJPPGがやって来た。

エース:「…あ…あはははは…コンチハお嬢チャン…」

 半ばガタガタの強化スーツを纏ったエースの顔色に、さっきまでの傲慢な余裕は完全に消え去っていた。
 そして、

ボルト&ブライト:「ジグザグ攻撃!!!!」

 二人が合図すると JPPGが5人を取り囲んで高速で回転し、レーザーブラストで攻撃を始める。慌てて攻撃を避けようとする所をEPPGが不規則な動きで撹乱し、情け容赦の無いパンチやキックやビームをお見舞いする。
 やがて、ギャングリーン・ギャングの「ゴメンナサイ」という悲惨な声がバリアの中を一杯に満たす。

 暫くしてバリアが 開放され、ジーン達3人が様子を見にやってくると、5人は完全に沈黙していた。
 コピーPPG6人にボコボコに叩きのめされ、悲鳴を上げる事さえ出来ない状態であった。
 想像以上の成果に、逆に血の気が引いたジーン達3人。

ボルト:「…ま、結果オーライって所かな?」

バーン:「これでJPPGは1勝1敗のイーブンという所で、このチンピラ達は許す事にしたわ」

ブレア:「あー面白かった!」

マサトシ&JPPG:「…あ…あはははははは…」

 さすがに、引きつった笑いしか出てこなかった。

バルド:「あの…おまわりさんの他に、救急車も呼んだ方が…」

 程無くして、警察官達を連れて市長と秘書べラムも駆けつけた。

市長:「いや〜君達、ご苦労さん!後は刑務所の中でゆっくり、こいつらの油を絞ってやるとしようかのう?」

ミス・べラム: 「その前に警察病院に連れて行くのが先なのでは、市長?」

 そして警官達が5人を護送車に連れこもうとした時、聞き覚えのある声があたりに響く。


謎の声:「〜全くアンタ達って、何から何まで何やっても駄目なダメダメ人間ね!そんなんでアタシを出し抜こうだなんて、100億万年早いのよ!」

エース:「…そんな〜、勘弁してくれよ…」

謎の声:勘弁ですって?アタシのパパのお金まで狙ってたアンタが、そんな事言える義理があるかしら?本当にバッカじゃないの!」

ミス・べラム:「この声、まさか…」

マサトシ:「ミス・べラム! 知ってるんですか?この声の正体を?」

 一気にその場が緊張に包まれる。それは警官は元より、JPPGとEPPGも同様であった。

謎の声:「折角の機会だから、アタシがそのブレスの本当の力を教えてあげるわ。邪魔なコピーPPGはあたしが葬ってあげるから、アンタ達は一生、ブタ箱で余生を 過ごしなさい!いいわね!」

 謎の声がそう言い放つや、5人のブレスが激しく光りだす。

スネーク:「〜な、何っスかこれええ??」

ビッグ・ビリー&リトル・アートロー:「〜た、助けてくれエース〜!!!!」

グラバー:「BBBBBBOOOOOOOO!!!」

エース:「〜プリンセス!…て、手前ェェェ???」

 警官達の手を逃れて、自らの意思と関係なく宙へと浮き上がるギャングリーン・ギャング。
 光が輝きを増すと共に、五人のボロボロの強化スーツが膨張を始める。その5つの光のシルエットは、 やがて巨大な機械の塊へと姿を変えてゆく。

 光が収まった時、ジーン達が見上げる上空には、幾何学的な機械の部品が人数分、滞空していた。
 そしてひときわ大きいパーツを中心に4つのパーツが合体し、明らかに巨大な人型の物体へと姿を変える。
 その大きさたるや、ユートニウム博士が作った巨大ロボット・ ダイナモよりもさらに上回る!

謎の声:「あ〜〜〜〜〜ッッはっはっはっはっはっは…どう?アタシのお気に入りのオモチャ?これがアタシのスーパーロボット
『トリプル・グラインダー』よ!」

 巨大な人型が、ゆっくりと大地に立つ。
 驚きを 隠せない一同。だが、最も焦りの色が濃いのはジーンだった。

ジーン:「…そうか!5人のバックに付いていた黒幕は、プリンセスだったのか!だからあの強化スーツも?」

市長:「どーいう事かねジーン君?」

ミス・べラム:「あの強化スーツを ギャング達に与えて暴れさせていたのは、プリンセスだったんです。聞いてます?」

マサトシ:「でも、今の5人の状態は…」

ジーン:「ああ、今の5人はただの操り人形同然で、コントロールはあいつが握っているはずだ!」

ブレア:「でも、私達が やっつける事に変わりはないでしょ?」

バーン:「当たり前よ!さっきと同じようにすぐにとっちめてやる!」

ボルト:「JPPG!三次元アタックだ!」

JPPG:「御任せ!」

 EPPGとJPPGの6人が ばらばらの方向に散らばると、グラインダーの上下、左右前後から間髪入れない連続攻撃が炸裂するが、グラインダーのボディには傷一つ付かない。
 ふと、何かを思いついたマサトシが、ジーンに合図する。

マサトシ:「もう一度バリアを使えないかい?」

 すると、咄嗟に再プログラ ミングをしながらジーンが応える。

ジーン:「ああ、30秒待ってな!」

ミス・べラム:「市長!すぐに警官隊を避難させて下さい!ここは危険です!」

市長:「ああ?何がど〜なっとるんじゃ?」

 しかし市長の指示よりも早く、秘書べラムの 指示で警官隊はすぐに避難を始めていた。そして起動プログラムの再構成を終えたジーンが、バリア発生装置を再起動させる!

ボルト:「離れろJPPG!」

 ボルトの指示で咄嗟にバリアの外に脱出するJPPG。再び現れたバリアは先の戦闘の時よりも数段小さく、グラインダーをその場に押し込める ような規模に縮んでいる。
 そして、中に残ったEPPGが再びバンドセットに戻り、必殺のへヴィーメタル攻撃を開始する!
 およそ数分間、先の戦闘の時よりも激しい衝撃が繰り出される。だが、次の瞬間、グラインダーが咆哮を上げるや、EPPGはバリアごと外側の方向へと弾き飛ばされ、バリア発生装置もビルの壁に 叩きつけられ大破した。
 同じく弾き飛ばされたかと思われたジーン達3人はJPPG達によって助け出されていたが、EPPGは完全に建物の壁に埋め込まれた格好となった。

ボルト:「〜あンの野郎〜…俺達の攻撃、まるで効いていないみたいじゃないかよ?」

ブレア:「…しかも、 さっきよりピカピカじゃない、あいつ?」

謎の声:あったり前よ!このトリプル・グラインダーは最高の素材と技術と資金を投入して作られた、言わば至高の破壊ロボット!タダでチンピラに呉れてやる程 アタシゃ余裕じゃないのよ!」

 プリンセスと思われる謎の声との会話に、グラインダーの中のエースが割って入る。

エース:「…この糞ガキ!俺達をどうするつもりだコノヤロウ!」

謎の声:「どうするも何も、アンタ達はこのままグラインダーの部品の一部となって、 アタシの役に立ってもらうのよ!あの餓鬼共はアタシが片付けるから感謝しなさい!」

バーン:「〜そう簡単にいくと思ったら、大間違いだぞ!」

 怒りも露に、バーンが両手にプラズマ光弾をみなぎらせて突撃をかける。
 グラインダーが振り下ろす右腕の 一撃をかわしたと同時に、バーンの放った光弾が正面と背後からグラインダーの頭部に命中した。
 だがグラインダーは左足を少したじろかせただけで、逆に返す左腕の一撃でバーンを弾き飛ばす。
 その直後、グラインダーの立つ地面がひび割れ、その場の空間がマイクロウェーブで満たされ、機体が小刻みに震える。 そして凄まじい落雷がグラインダーを襲う。
 これではどうだ、とボルトとブレアが思った瞬間、目にも止まらぬ速さでグラインダーの両の手が二人を握り締める。

ボルト:「…こいつ、全然効いてないのかよ…俺達の攻撃が!?」

ブレア:「〜だったら、これはどう?」

 ブレアが渾身の力を振り絞って抜け出すや、グラインダーの目の前を飛んでゆく。そして、

ブレア:「♪悔しかったら、ここまでおいで♪」

 一瞬、その場に居る人物全員(グラインダー以外)の思考が停止する。
 その直後、グラインダーの レーザーブラストがブレアをいとも簡単に射ち落とす。
 絵に描いたように真っ黒な状態で、黒い煙を描いて墜落するブレア。

ボルト:「あのなあ…力比べやってるんじゃないぞ!」

バーン:「…おバカ!」


 かくして結局、3人全員ノックアウトされ、ジーン達に介抱されるEPPG。

謎の声:「はぁ〜〜〜〜ッッはははははは…後はアンタ達だけよ。服従するなら今がチャンスよ〜?今だったら許してあげるかも、みたいな〜?

バルド:「どうする、 みんな?」

ジーン:「逃げようとすれば間違いなく狙い撃ちにされる。しかし…」

 今までに無く重苦しいムードの中、

ブライト:「あたし達が、戦うわ!」

バルド:「〜でも、EPPGのスーパーパワーでも敵わなかったのに、勝てっこないよ!」

ブレード:「…でも、やってみなくちゃ分からないよ」

ブルー:「バルドはジーンと一緒に、EPPGを連れて逃げて!後は…私達が何とかするから」

バルド:駄目!マサトシも何とか言ってよ!一緒に逃げようって…」

 しかし、マサトシ自身も覚悟を決めたようで、今にも泣き出しそうなバルドを繰り返しなだめて、JPPGと一緒に立ち上がった。それを見届けて、ジーンがこの言葉を語った。

ジーン:「一言だけ言っとく。無茶はするなよ!

JPPG:「もちろん!」

 そう言うと一斉に、JPPG3人が別々の方角へと飛んでゆく。
 暫くして、高い建物の向こうで、激烈な戦闘が開始された。
 それを見届けて、ジーン達はEPPG達を連れて、市長達の待つ緊急対策本部へと向かった。

 対策本部に到着してすぐ、病院へと搬送されるEPPG。患者を運ぶ救急車には、ジーンと バルドが付き添いで同行していった。
 救急車が出発してすぐ、現場に戻ろうとするマサトシを、秘書べラムが必死に止めた。

ミス・べラム:「気持ちは分かるけど、このまま行って貴方の身にもしもの事があったら、あの娘達にどう言えばいいの!」

マサトシ:分かってます!…このまま行っても、足手纏いになるかもしれないって…でもJPPGは、勝てない事を分かってそれでも、あいつと戦ってるんだ!僕に、出来る事は…」

 一瞬、力の緩んだ秘書べラムの手を、振り解くマサトシ。その瞳には悔し涙が滲んでいた。

マサトシ:「せめて、何も出来ないなら…僕はあの娘達の側に行って、声の枯れるまで応援、しなくちゃ…いけないんです…」

 マサトシが振り絞るようにこの言葉を語った時、彼等のいる場所から少し前の道路で、猛烈な爆風が巻き上がった。
 その場に居る全員が、はっとして爆風の方向に注意を向ける。

 時間は少し遡る。

謎の声:「ど〜なのぉ?返事くらいしなさいよ〜?」

 プリンセスとおぼしき声の主はさらに挑発するように、降伏を迫る。
 その直後、グラインダーの立つ地面が突然せり上がり、機体がバランスを崩してそこに出来た大穴に落下する。
 すかさず、グラインダーの 立っていたアスファルト製の地面が大穴に蓋をする。

ブレード:「やりい!」

ブルー:「油断しないで!次の作戦は?」

ブライト:「まずはあいつを街の外におびき寄せるわ。それから…」

 ブライトがその続きを話そうとした時、強烈な爆発と共に グラインダーが大穴から飛び出してくる。

謎の声:「いい度胸してるじゃない…だったら今度こそ、生みの親でも見分けがつかない位、グズグズのミンチにしてあげるわ!」

 プリンセスとおぼしき声の怒号と共に、グラインダーが襲い掛かってくる!
 驚くべき事に、巨体の割にグラインダーはJPPGと同じ速度で飛行して追跡し、JPPG以上のスピードで攻撃を仕掛けてくるのだ。その攻撃も、レーザーブラストは元より、遠隔操作のロケットパンチや、変形機構を生かした打撃まで、JPPGの予想を遥かに上回るパターンの多さだ。
 いかにコピーPPGと言えども、3人は 紙一重で攻撃をかわすのがやっとの状態だった。
 もはや街の外におびき寄せる等の問題など、逃げるだけで手一杯の彼女達に考える暇もなかった。
 3人バラバラに別方向に逃げようとするJPPGの内、最初にブライトがミサイル攻撃で、次にブルーとブレードが遠隔操作のロケットパンチで射ち落とされる!
 そして、3人が墜落した場所は、マサトシ達のいる緊急対策本部の近くだった。

 爆風に巻き込まれた本部は混乱し、誰が無事なのかの確認さえ取れない状態だった。
 秘書べラムの足にしがみついていた市長は無事だったが、彼女はマサトシを見失ってしまった。そしてその次に彼女の視界に写った光景は、 最悪の事態であった。
 目の前にグラインダーが立っていたのだ。

 だがグラインダーは警官隊や秘書べラムに眼もくれず、崩れ落ちたJPPG3人の姿を捜し求める。

 偶然にもJPPGの倒れた場所の近くに吹き飛ばされたマサトシは3人を担ぎ上げ、すぐに建物の影に隠れた。しかし、グラインダーはすでに彼等の いる場所を察知しており、わざと捜す振りをして彼の焦りと恐怖を煽っていた。
 意識を失いかけたJPPGを抱え、マサトシは一人、恐怖と戦っていた。
 グラインダーへの恐怖と自分の無力さに絶望しかけている彼の頬に、意識の戻ったブライトが触れる。
 続いてブルーとブレードも、弱弱しい両腕で彼の震える体を 抱きしめる。

ブライト:「…大丈夫だよマサトシ」

ブレード:「〜だって私達は、まだ私達のやる事をやってないもん。こんな所で負けてる場合じゃないって…」

ブルー:「何時どんな時だってマサトシは側に居てくれる。だから私達も、頑張れる。 諦めない。負けない…」

 3人の言葉に、はっと我に返るマサトシ。そして満身創痍のJPPGは渾身の力を振り絞り、彼の胸元を離れる。
 3人の表情は明らかに疲労の色がにじみ出ていたが、瞳の色の生気は未だ失われてはいなかった。
 マサトシが何かを言いかけようとした時、3人は飛び出していった。そして マサトシも彼女達の後を追いかけようと、恐怖にすくんだ身体に激を飛ばす。


謎の声:「本当にしつこいわねえ…でも、これで本当に終わりにしてやるわ!」

 プリンセスとおぼしき声が不敵な台詞を吐くや、先の攻撃以上の猛攻がJPPGを襲う!
 一方、グラインダーに取り込まれて身動きの取れないギャングリーン・ギャングは、何時の間にか自分達の都合で、勝手にJPPGを 応援し始めてていた。そして五人の軽薄な応援の声は、当然ながらJPPGの耳には届いていない。

 マサトシが勇気を振り絞って建物から身を乗り出すと、そこには痛ましい光景があった。
 今にも倒れそうなJPPG3人に向かって、グラインダーの無慈悲な猛攻が繰り返される。数え切れない攻撃を受けてなお、立ち向かう ブライト、ブルー、ブレードの3人。しかし、3人はそれでも必死でグラインダーに食い下がる。余りにも意外なしぶとさに、謎の声の主も苛立ちを露にする。

謎の声:「〜もう、いい加減にしなさい!」

流れる涙をぬぐいもせず、かっと眼を見開いて歯を食いしばるマサトシ。瞳の奥の彼の感情は、 悔しさと恐怖と、少し前に3人が言った言葉とが激しく渦巻いていた。
 高まる感情に耐え切れず、彼のこわばった口から、振り絞るような絶叫が迸る。

マサトシ:「負けるなああああああ!!!!」

 自分がどうしてここにいるのか、それを思い出した時、彼は 喉を振り絞って叫んだ。それは、彼が出来る精一杯の応援だった。

 その時、聞こえないはずのマサトシのこの声が、3人の脳裏に響いた。
 薄れかけた3人の意識にこの声が響いた時、意識の一瞬の間に、同じ光景が浮かんだ。
 実際は一瞬の出来事だったが、彼女達がその一瞬の無意識の中で見た出来事は、 まぎれもなく確かな事実であった。

 暗闇の中に暖かな光りを放つ人影、それは、おのおののモデルとなったPPGのシルエットだった。
 無意識に導かれるように、ブロッサム、バブルス、バターカップのシルエットに手を触れるブライト、ブルー、ブレード。
 その瞬間、はっと何かに気付いたように眼を見開くJPPG。 そして、真っ白い闇に消えてゆくPPGの口元が何かを告げる。
 声にはならなかったが、JPPGにはそれがはっきりと聞き取れていた。そして―

 突然、ビルの壁に叩きつけられるグラインダー。一体何が起こったのか、プリンセスとおぼしき声の主にも皆目検討がつかない。
 グラインダーの眼にあたるメインセンサーが とらえたJPPGは、先までの満身創痍な様子から打って変わって、何かが変わったような雰囲気に包まれていた。それが一体何なのか、誰にも分からない。

謎の声:「何やってるのグラインダー!とっととガキ共を片付けなさい!」

 声の主の命令に反応してグラインダーが体勢を立て直し、ボロボロの状態のブレードに必殺の一撃を振り下ろす!
 次の瞬間、凄まじい埃と煙が轟音とともに吹き上がる。
 勝利を確信していた声の主は、次にモニターに写った 光景に目を疑った。その光景とは!
 叩き潰されているはずのブレードが、片手でグラインダーの右腕を受け止めている。
 しかも、受け止められた腕をどうする事も出来ず、グラインダーは動揺している様にも見える。
 やっとブレードが手を離すと、グラインダーはバランスを崩して再びビルの壁にもたれかかる。

 グラインダーの腕が振り下ろされた瞬間、ブレードの最期を覚悟したマサトシも、目の前の出来事を理解できなかった。
 一体、彼女達に何が起こったのか?

 JPPGの三人がマサトシの方を振り返る。その顔は埃だらけだが、ついさっきまでとは異なり何時もの無邪気な表情だ。

ブレード:「マサトシ、 私達…やっと見つけたよ!」

ブルー:「うん、私達だけの持ってる力、」

ブライト:「それは、マサトシが私達に呉れたPPGの力!」

 三人がブレードの元に集まり、それぞれの手を重ねる。

ブライト:「ブロッサム!」

ブルー:「バブルス!」

ブレード:「バターカップ!」

 JPPGがPPG三人の名前を叫ぶや、重ねた手元から迸った三つの光が虚空を翔ける。そして、ブライトにパステルピンクの光が、ブルーにパステルブルーの光が、ブレードに パステルグリーンの光が降り注ぐ!

JPPG:「POWER UP!」

 JPPGの怒号と共に、スーパーパワーの証であるV字の飾りが額に、腰に現れる。
 JPPGの新しい姿が現れた時、三人は自身の漲る勇気で、闘志で、正義の威光で辺りを光り輝かせた!

謎の声:「馬鹿じゃないの?ちゃちいアクセサリを付け足した位で、調子に乗るんじゃないワよこの死にぞこないが!!」

対峙するグラインダーもありったけの咆哮と力を漲らせて、三人に襲い掛かる!
 しかし、グラインダーの猛攻をブレードは涼しい顔で受け止め、逆に片手でグラインダーの 片足をつかむと、どこかで観たマンガ映画のワンシーンのように振り回し、地面に叩きつける!

謎の声:「嘘お!!!???」

 さっきまでの大苦戦からは予測もつかない、想像を絶し理解を超えた展開に、声の主が驚愕の声を上げた。
 振り回す行為に飽きたブレードが天高く グラインダーを蹴り上げ、バランスを失ったグラインダーは猛烈なきりもみ回転と共に落下し、地上に激突した。
 当然、中に居るギャングリーン・ギャングはたまったものではなかったが、ふらふらになりながらも大喜びだった。

エース:「いいぞ〜パチモンPPG〜もっとやっちまえ〜」

スネーク: 「あの〜、素直にあいつらに応援しちゃって、いいんスか?」

エース:「…あ…」

 一方のマサトシはこの信じられない光景を目の当たりにして、突然、悟った。
 間違いなく、JPPGはスーパーパワーに目覚めたのだ、と。
 ただ、その能力が何なのか、彼が理解するには現時点では未だ無理があった。

そして、ブレードが今度はブライトにタッチした。
 激怒した声の主の操るグラインダーが、恐るべき連続攻撃をブライトに見舞う。
 先のブライトなら完全に抹殺されていたであろうグラインダーのオールレンジ攻撃を、ブライトはまるで瞬間移動でもするように余裕で回避する。
 グラインダーがいかにもむきになって猛攻をかける ので、両者は何時の間にか激しく回転する格好となっていた。
 しかしブライトは一度、回転の渦の外に出ると再度、回転の反対方向へ回りだす。そのスピードは、間違いなく普段のブライトの数十倍、もしくは数百倍はあるだろう。
 ブレードの投げ技とブライトの光速回転によって、全身のメカに負担を来たしたグラインダーは立つのも やっとの状態だった。

謎の声:「〜アンタ達、さっきは手加減してたワね〜!?正義の味方がこんなヒーローショーまがいな演出して、ふざけるのも大概にしときなさいよ!!!!」

 謎の声の怒りの抗議と共に、グラインダーの胸部からJPPGに向かって、 恐るべき破壊光線が発射された!
 惑星の核融合反応に匹敵するエネルギー量の、必殺の破壊光線がJPPGを襲う。しかし、最大出力で放たれたはずの破壊光線は、絵に描いたように空中で停止していたままである。

ブルー:「こういうのが普通、手加減って言うんじゃないかなあ?」

 グラインダーの破壊光線よりも さらに強力なブルーのレーザーブラストが、光線を押し止めていたのだった。

ブルー:「…じゃあちょっとだけ、本気☆

 ブルーがそう言うと、彼女のレーザーブラストが破壊光線を押し返し、グラインダーはレーザーブラストの威力であっけなく吹き飛ばされた。
 中のギャングリーン・ギャングも真っ黒な状態だが、ヤケクソ気味でJPPGを応援する5人にはどうでもよかった様だ。

エース:「いいぞ〜パチモンPPG〜もっとやれ〜」

スネーク:「だ〜か〜ら〜、素直にあいつらに応援しちゃって、いいんスかボス?」

エース:「やかましい! あの糞ガキに不利ならかまわねえんだよ!!!」

 相手が弱っている事を確信して、我に返ったマサトシが、グラインダーに向かって拳をかざす。

マサトシ:「みんな、今こそ特訓の成果を見せる時だ!」

 その声を待っていたのか、生き生きと目を輝かせたJPPGがフォーメーションを 組む。
 最初にブレードがブライトの足をつかんで回し始める。
 その回転は巨大な竜巻を起こすまでに速度を増し、ブライトの身体に運動エネルギーが蓄積されてゆく。

マサトシ:「3(スリー)…2(トゥー)…1(ワン)…」

JPPG:「FIRE!!!!!」

 ブルーの大出力レーザーブラストが放たれると同時に、ブレードの手から放たれたブライトがレーザーの中に突入し、彗星のような白い光を放ちながら光の速さで、竜巻で身動きの取れないグラインダーを矢のように貫いた!
 白い光が収まってブライトが現れた時、グラインダーの胴体は巨大な弾痕で二つにブッ千切られていた。
 そして、 轟音と共に爆発、四散するグラインダー。飛び散る部品の中に、煤だらけで真っ黒のギャングリーン・ギャングの姿もあった。

スネーク:「〜だ〜か〜ら〜」

エース:「〜しつこいぞテメエ!!!!」

ビッグ・ビリー:「〜あ〜り〜が〜と〜 パワ〜パフガ〜ルズ〜」

 意外なビッグ・ビリーの挨拶にあっけに取られるJPPG。

 ビル街の一角を戦場と化して繰り広げられた戦いの後には、細かい機械の破片と瓦礫、黒い後だけが残された。
 敵を倒してマサトシの元に戻ってきたJPPG。ちょっと照れくさそうに彼の顔を見上げる三人。
 改めて無事な3人の元気な姿を見て、 マサトシはJPPGは3人が再び生まれたように思って、喜びの余り三人をかき抱いた。
 その目には歓喜の涙がとめどなく溢れていた。
 ちょっと意外な彼の抱擁に戸惑ったJPPGだったが、先の彼の動揺の有様を思い出して、甘えるように身をゆだねる。

 気持ちが落ち着いてやっと身体を離すマサトシ。

マサトシ: 「〜御免な…いつも泣き虫で」

ブルー:「〜てへ☆」

ブライト:「…心配かけたけど、もう大丈夫みたい」

ブレード:「実はあたし達の、信じられないよ…このスーパーパワーがさあ」

ブライト:「それじゃ二人とも、パワーアップを 解いてみましょ?」

 一段落して、ようやくパワーアップを解くJPPG。その途端、急に疲労感に襲われてその場にへたり込んだ。

マサトシ:「みんなどうした??」

ブライト:「何か、元に戻ったら急にどっと疲れちゃって…もう立てない感じ〜」

ブルー:「〜あたしも〜」

ブレード:「これって、パワーアップの反動かなぁ〜」

 そのまま疲れて、眠り込む三人。何事が起こったのか、又しても困り果てるマサトシ。
 そこに、市長達が駆けつけた。

市長:「こりゃあ派手にやりあったもんじゃの〜?」

ミス・べラム:「怪我はない?」

マサトシ:「怪我は、ないですけど…」

 と続きを言おうとした時、

バルド:「マサトシ!」

 後ろからバルドが抱きついてきた。

バルド:「…よかったぁ無事で!」

ジーン:「一体、何があったんだ?それに、JPPGの様子は…?」

マサトシ:「3人は疲れて眠っているだけだよ。実は…」

 そして、マサトシはグラインダーとの戦いの一切の様子を説明した。

 詳細を聞き終えて、何かを思い当たるようにうなずくジーン。

ジーン:「なるほど…もしかすると彼女達は、スーパーパワーが発動すると普段より早く体力を消費するのかもしれないなあ。 その事については又、後で考えるとして…」

 ひと呼吸おいて、

ジーン:「ちょっと残念だったなあ」

マサトシ:「何が?」

ジーン:「俺もJPPGの活躍する所、見たかったな」

 そう言って笑いを浮かべるジーン。

バルド:「あたしだって!とっても心配して急いで来たのよ!何だか、損しちゃったみたい」

 マサトシの首元に抱きつきながら、不満を漏らすバルド。

ミス・べラム:「はいはい、それは分かったから、早く3人を連れて帰りましょ!」

 絶妙のタイミングでその場を収める秘書べラム。突然、何かを思い出して市長が叫ぶ。

市長: 「思い出した!あのチンピラ共は何処行った?」

マサトシ:「あ…爆発の時にどこかに飛んで行ってしまいました」

市長:「何と!」

 珍しく真剣な驚きの表情の市長。

市長:「ミス・べラム!急いで警官隊を捜索に回せ!奴等を逃すでないぞよ!」

 珍しく公務に熱中している市長が激を飛ばす。

ミス・べラム:「〜それじゃ、後の事は頼むわね」

 ひとまず警官隊の元に戻る市長と秘書べラム。残ったマサトシ達三人は、JPPGを一人ずつおぶって病院へ歩き出した。

ジーン:「〜ひとまず、俺の役目は終わったみたいだな」

バルド:「?」

ジーン:「俺がここにやって来たのもJPPGのスーパーパワーの覚醒を促す事だったけど、彼女達の力が発動した以上、後はマサトシ、お前が面倒見てやれよ」

バルド:「〜でも?」

ジーン:「JPPGのスーパーパワーにどんな長所と短所が あるのか、それを見届けるまでが俺の役目だ。まあ、もう少し付き合うけどな」

バルド:「もう〜もう少し分かり易く言ってよ!」

ジーン:「〜ああ悪いワリい。まだ実際にJPPGのスーパーパワーを見てないから、3人が回復してから俺に見せて欲しいんだ。詳しい事が分かるかもしれないし、力の正しい 使い方だってアドバイス出来るだろ?」

 納得してうなずくバルド。

マサトシ:「…色々、ありがとう」

ジーン:「気にするなって。俺も彼女達の役に立てて嬉しいよ。それに、」

マサトシ:「それに?」

ジーン:「研究テーマが増えてこっちも サポートのやり甲斐があるってもんよ!」

 営業スマイルを決めるジーン。一方、何の事だか呑み込めないバルド。

バルド:「何それ?」

マサトシ:「〜まあ、帰ったらちゃんと説明してあげるよ」

バルド:「…でさあ、ネットの事だけど…」

ジーン: 「それはまだお預け!」

マサトシ:「病院に居るEPPGの事もあるし、もうちょっと待ってね」

 正直な所、ちょっと不満な所が残るバルドだったが、背中で眠っているJPPGの事を思って、一緒に我慢する事に決めて、話題を変える。

バルド:「〜でもぉ、ワクワクしちゃうなあ!JPPGのスーパーパワー、 私も早く観てみたいよ!」

 それを聞いて、ふと背中で眠っているブライトの方を振り返るマサトシ。彼女はまだ、夢の中でも活躍してるかのように寝言を漏らしている。
 それを眺めて、彼女達に対して一層、愛情が湧く思いを感じるマサトシだった。


 同時刻。

 プリンセスの秘密基地内のプリンセス専用司令室。
 結果的に敵のコピーPPGのスーパーパワーを呼び覚ましてしまった事に超激怒のプリンセス。対照的に超クールで冷静な対応のブラックジャック。
 怒りをぶつける相手も見つからず、彼女の激昂はとどまる事を知らない。

プリンセス:「今度あんな風に うまくいくと思ったら大間違いよ!覚えてらっしゃいJPPG!!!!


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